日本のITは世界から10年以上遅れていると言われてから久しい。「企業戦略はIT戦略だ」と唱えられてからも10年以上の歳月が経つ。しかし、日本企業のデジタル化の歩みは遅い。企業戦略はIT戦略なのだから企業組織はEPR(IT基幹システム)に基づいて構造化されねばならない。経済産業省も日本産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を唱えてきたが順調に進んできたとは言いがたい。
しかし、このところ新型コロナウイルス感染症への対応としてDXを加速させる企業が増加しているようだ。これを背景に企業の諸資源を統合する基幹システムであるERPのパッケージライセンス市場も好調のようだ。
7日、矢野経済研究所が国内のERPパッケージライセンス市場を調査したレポートを公表している。レポートによれば、2019年のERPパッケージ市場は1198億3000万円で、DXを追い風に前年比7.0%増の大きな成長となっている。さらに、本年は新型コロナウイルス感染症による影響が懸念されたものの上半期での影響は軽微で、20年通年の市場規模は1241億6000万円、前年比3.6%の増加と順調にプラス成長する見込みだ。
本年のERP市場の成長を支えている要因の一つがコロナ禍でのクラウド化の加速だ。19年のクラウド利用率はIaaS/PaaS利用とSaaS利用の合計で38.3%であった。これまでも企業のクラウド化は順調に推移してきたが、コロナ禍においては非対面が推奨され、モバイルワークの利用率が高くなりクラウドの利便性が向上することから、今後さらにクラウド化が加速するとレポートでは見込んでいる。
企業の基幹システムであるERPが普及し利活用されることで経理や人事担当者などのテレワークを推進できること、またベンダーがメンテナンスや不具合対応をリモートで行えるようになるなどを利点にERPは一層重視されるようになると見込まれる。このため、今後のERP導入においてはクラウド型のERPが優先される見通しだ。レポートでは、21年のクラウドの利用率はオンプレミスを上回り63.5%に達すると予測している。
これまで順調であったERP市場であるが来年21年は投資減退による反動で前年比2.7%の減少となる見通しだ。しかし、22年の市場規模は1243億円、前年比2.9%までに回復すると予測されている。(編集担当:久保田雄城)