グッドデザイン賞2020受賞作発表。応募総数4769件の中から選ばれた珠玉のデザイン

2020年10月11日 07:13

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住宅展示場のモデルハウスは、住宅メーカーの商品の中でもトップクラスの設備を持つものが多い

 毎年恒例となった「グッドデザイン賞」の2020年度受賞結果が10月1日、主催者である公益財団法人日本デザイン振興会から発表された。

 コロナ禍の中、「交感」をテーマに据えられた今年のグッドデザイン賞は、大変な状況であるにもかかわらず4769件もの応募があり、その中から国内外のデザイナーや建築家、専門家など、各分野の一線で活躍している94名の審査委員による厳正な一次・二次審査を経て、1395件の「グッドデザイン賞」受賞作品が決定した。

 グッドデザイン賞は日本で唯一の総合的デザイン評価・推奨の制度だが、主催者によると、決してデザインの優劣だけを競うものではないという。その目的は、審査を通じて新たな「発見」をし、Gマークとともに社会と「共有」することで、次なる「創造」へ繋げていく仕組みの構築にあり、根源的なテーマとして、「人間(HUMANITY)」「本質(HONESTY)」「創造(INNOVATION)」「魅力(ESTHETICS)」「倫理(ETHICS)」の5つの言葉を「グッドデザイン賞の理念」として掲げている。つまり、グッドデザイン賞という検証制度そのものが、社会をより良いものに導いていくデザインということなのだろう。

 ところで、あなたは「優れたデザイン」といわれて、どんなものを創造するだろうか。

 多くの人は「優れたデザイン」といえば、都会的で洗練された製品そのもののことを思い浮かべるのではないだろうか。しかし、グッドデザイン賞の受賞作品は、姿かたちを対象にしたものではない。

 例えば、今年の受賞作品の中に、木造注文住宅メーカーのアキュラホームによる「災害時支援施設」というものがある。住宅メーカーが提供する災害支援施設と聞くと、何か最新設備の整った新しい施設でも設計したのかと思うかもしれないが、実はそうではない。アキュラホームの災害支援施設とは、現在、モデルハウスを展開している住宅展示場のことだ。もしも災害が発生したときには、その展示場の設備をそのまま、災害支援設備として活用するのだという。

 考えてみれば、住宅展示場のモデルハウスは、住宅メーカーの商品の中でもトップクラスの設備を持つものが多い。耐震や耐火などに優れているのはもちろん、太陽光発電設備や大型の蓄電池など、確かに災害発生時には心強いものが備わっている。アキュラホームではこれらに加え、断水時でも活用できる井戸や、自動車メーカーと連携して電気自動車を常駐させ、非常時には大型の蓄電池として活用できるなどの独自の工夫をプラスすることで、ありそうでなかった、日本で初めての「災害時支援施設」を誕生させたのだ。

 ちなみに、同社は「災害時支援施設」のほかにもう一点、「カンナ削りの木のストロー地産地消モデル」でも受賞しており、これまでの同社の受賞歴としては9年連続、累計25点になるという。今回の2作品は、商品そのものの見た目ではなく、今までになかった地域貢献のあり方、そのデザイン性が高く評価され、受賞に至った。同社は今後、アキュラホームグループだけでなく、災害施設としての活用が住宅業界に浸透し、「住宅展示場の建設=地域の安心感」という価値観の先駆けとなるよう、働きかけていくという。

 また、地域貢献をテーマにしたものでは、神奈川県の株式会社ロケッコによる「地域の魅力を発見するワークショップ [手書き地図推進委員会]」も面白い。白い大きな模造紙にカラフルなペンで自由に描いた手書きの地図。小学校の時に、誰しも一度は作成した経験があるのではないだろうか。同企画では、そんな手書き地図を作成するワークショップを通して、自分たちの住む地域の魅力を再発見し、その魅力を外の人に知ってもらおうとするもので、2013年から続けられているという。「街へのラブレター」「足だけではなく、心を動かす地図」「あなたの日常は誰かの非日常」をキーワードに誰でも楽しく参加できる、素敵な活動だ。我が町を知り、地元愛を深めるるだけでなく、長く歴史を知っているお年寄りたちがヒーローになり、世代を超えて知を伝承する機会にもなる。デジタル技術の発展で、映像や音声も記録媒体に簡単に残せる時代だが、だからこそ、これからの高齢化社会には、こういう温かい、人の温もりが感じられる「伝承」方法がますます求められるようになるのではないだろうか。記録ではなく、記憶や経験を語り、後世に受け継ぐことは、その人がその地で頑張って生きてきたことの何よりの証なのだ。

 グッドデザイン賞を受賞した 1395件の作品すべてを紹介することはできないが、選ばれた一つ一つの作品はいずれも、「グッドデザイン」という呼び名と、ロゴマークを冠するにふさわしいものばかりだ。そして、さらにこの中から「グッドデザイン・ベスト100」が厳選され、審査の末に今年度の「グッドデザイン大賞」などの特別賞が10月30日に発表される予定だ。(編集担当:今井慎太郎)