トヨタ自動車と住宅設備機器製品製造大手のLIXIL(リクシル)は、車いす使用者が外出先で安心して使える移動型バリアフリートイレ「モバイルトイレ」を共同開発したと発表した。
公共施設では、車いす使用者を含めたさまざまな身体状況を抱えた人が利用できるバリアフリー型多機能トイレの整備が進んではいるが、未だ十分とは言えないのが現状だ。なかでも屋外の特設会場などで行なわれるイベントでは、一般健常者のトイレでさえも貧弱で、衛生設備として脆弱な施設が多い。
こうした課題に対し、モビリティカンパニーを目指すトヨタと水回りを中心とした建築設備やバリアフリー建築全般に知見をもつLIXIL両者の強みを生かして、今回開発・発表したのが、移動型バリアフリートイレ「モバイルトイレ」だ。
移動型バリアフリートイレ「モバイルトイレ」は、快適・衛生的な多機能トイレを車両に搭載し、クルマに牽引させることにより自由に移動して、あらゆる場所の設置可能で、各種イベント参加やスポーツ観戦など、車いす使用者の外出先での不安を払拭し、あらゆる催しなどへの参加の可能性を広げることに寄与する。
車両の前後には遠くから認識できるよう大きな多機能トイレマークを配置し、超低床車体の設計によって、出入口への動線はなだらかなスロープを実現。車内はLIXIL仕様の多目的トイレそのままに、車いすが回転しやすい空間を確保し、手すりの備わった便器など車いす使用者にとって必要な機能を兼ね備えている。
また、多目的に使えるユニバーサルシート(大型ベッド)や車いす使用者がより快適にトイレを利用するために、自分で衣服を整え、介助者が待機できる前室をも用意した。
開発には、パラアスリートや福祉工学の専門家、被災経験のある自治体関係者、さまざまな理由で車いすを使用することになった人々にヒアリングを実施。「介助者の手を借りずに一人で乗り込みたい」「上半身が元気そうでも、オムツ替えが必要な場合がある」「気分が悪い時に、横になれるとありがたい」などの声を聞くことができたという。
今後は、このモバイルトイレをさまざまなイベントなどに出展し、車いす使用者や介護する方々からの声を参考に、車体の改善に活かすとしている。
トヨタとLIXILは、障害の有無にかかわらず、誰もが行きたい場所に行き、やりたいことに挑戦できる社会の実現に貢献していくとも。
なお、「モバイルトイレ」は、2020年11月21日、22日に横浜市北仲通地区で行なわれる「横浜北仲フェス」で横浜市役所敷地内に設置し、実際に使用する予定だ。(編集担当:吉田恒)