電子契約、採用企業が急増。コロナやGMOを契機に信頼性の認知広がり100億円超市場に

2020年12月04日 06:49

画・電子契約、採用企業が急増。コロナやGMOを契機に信頼性の認知広がり100億円超市場に。

矢野経済研究所が国内の電子契約サービス市場を調査。2020年の市場は前年比58.8%増の108億円と推計

 新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークの利用が広がりを見せた。感染症対策として導入されたものだが、押印のために出社しなければならないなど不便さが目立ち、印鑑廃止に向けた議論のきっかけともなった。

 テレワークの利用率が低い中で、あまり注目されなかった電子契約サービスだが、テレワーク普及によって、にわかに注目を浴びるようになる。また、緊急事態宣言下の4月にGMOインターネットグループが、顧客が手続する際の印鑑廃止と取引先との契約を電子契約のみとすることを表明したインパクトも大きく、これに追随した企業も少なくないとみられている。こうした動きの中で、2020年上期に電子契約サービスの導入やサービスの適用範囲の拡張を行った企業が急増しているようだ。

 11月24日、矢野経済研究所が国内の電子契約サービス市場を調査した結果を公表している。これによれば、国内電子契約サービスの市場規模は事業者売上高ベースで、19年に68億円と推計され、今年20年は前年比58.8%増の108億円に達すると予測されている。

 昨年までにも、電子契約サービスやその信頼性に問題が無いことの認知は徐々に広がりをみせており、また、19年には雇用条件通知書の電子化交付も認められたことなどから、市場は順調に成長してきた。さらに20年に入り、新型コロナ対策として在宅勤務が急速に普及する中、印鑑廃止が課題となるなど、BCP(事業継続)の観点からも電子契約サービスが注目されるようになり、20年上期に電子契約サービスの導入や適用範囲の拡張を実施した企業が急増した模様だ。

 大企業での導入が中心のようだが中小企業でも導入や検討が進んでいる。かつては導入までに1年以上を要することもあったが、現在は2~6カ月程度で導入するケースが増えており、導入期間は短縮傾向にあるようだ。

 5月に法務省が会社法上の手続きの電子署名を有効とし、6月には内閣府や法務省、経産省が契約書の押印を不要としたことなども追い風になっており、21年に本格導入を目指す企業も増えてきているようだ。このため21年の市場はさらに伸長し、前年比62.0%増の175億円に達すると見込まれている。長期展望としては、17年から24年までの年平均成長率を37.8%と見込み、24年の市場規模は264億円に達すると予測されている。(編集担当:久保田雄城)