コロナ禍の景気低迷で求人倍率は低下している。しかし、人手不足の問題は、少子高齢化という人口動態からくる構造的な問題であり、コロナ対応から来る一過的な需要低迷で解決されるものではない。
この問題を解決するために日本では女性、外国人そしてシニア(高齢者)の活用が推進されてきた。シニアの活用に関しては、2021年4月から70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となるが、終身雇用、年功序列を前提とする日本型雇用と相容れないとの指摘も出てきている。また、時代の変化の中でシニアのスキルやモチベーションに課題を感じる者も少なくないようだ。
これに関連し、人材コンサルタントのパーソル総研が人事関連の担当者800人を対象として9月下旬に実施した「企業のシニア人材マネジメントの実態調査」の結果を11月30日に公表している。
これによれば、シニア人材について「すでに課題感を持っている」企業の割合は49.9%。また、今後「5年以内に課題になる」では75.8%と8割近くに達している。課題の内容について見ると、「モチベーションの低さ」について「すでに課題になっている」との回答割合が44.9%で最も多く、「5年以内に課題」が28.3%。次いで「パフォーマンスの低さ」の「すでに課題」42.9%が続き、「5年以内に課題」は29.6%。「現場のマネジメントの困難さ」の「すでに課題」41.4%、「5年以内に課題」30.0%などとなっている。レポートでは「日本型雇用とシニア活躍は相性悪く、職務を軸とした配置・処遇がシニア活躍のカギ」と指摘されている。
「70歳までの就労機会提供の努力義務への対応」については、定年後再雇用を「実施している」と「検討している」の合計は86.1%と9割近く、最も有力な選択肢となっている。シニア人材活用の施策としては、一定の年齢で一律にポストを外す「ポストオフ・役職定年制度」が38.1%とトップになっているが、「スキルアップ研修」30.6%など人材開発の拡充も求められる。
人材開発の予算配分を見ると、「新卒入社」が34.5%と最も多くなっているのに対し「シニア人材」はわずか6.3%にとどまっている。レポートでは分析コメントとして「職務を軸とした人材マネジメント(配置・処遇)がシニア課題解決のカギ」であるとし「シニア人材の能力開発・キャリア開発をもっと強化すべきだ」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)