扶養照会に菅総理、そこは『縦割り答弁』

2021年01月30日 09:59

 生活保護申請に伴い申請者の親族に扶養の可能性に関する文書が送付され、確認される「扶養照会」が保護申請をためらう最大要因になっているといわれている。DVや親からの虐待などの場合には扶養照会はされないが通常、問い合わせが行われる。そのために自身の境遇が親族に知られるとして申請をあきらめたり、心配をかけたくないとしてあきらめるケースが多いという。

 28日の参院予算委員会で、この問題が取り上げられた。日本共産党の小池晃書記局長は扶養照会が法的に義務になっていないのであれば運用を変えるようにと菅義偉総理に検討を求めた。

 所管大臣として田村憲久厚生労働大臣は「扶養照会」は法的な義務にはなっていないとしたうえで「家族関係が壊れている中で、生活保護が受けられないというようなことはあってはならない。そういう意味で、あの人とはずっと会っていないし、あの人には言わないでほしい、知られたくないというような場合は『家族関係が壊れている』わけなので、そういう方に関しては扶養照会しない」と答弁した。

 田村大臣は「あの人に自分の色んな姿を知られたくないというようなことがある場合、それはもう、家族関係が壊れているわけだから」としたが、小池氏は「家族関係が壊れていないから『心配かけたくない』、『知られたくない』とためらっている」と反論し、『扶養照会』そのものの運用見直しを強く求め、総理に答弁を求めた。

 しかし菅総理は「担当大臣(厚労大臣)が執行するわけなので、私からそれについて申し上げることは控えたい」とそこは『縦割り』の答弁をした。

 小池氏は「縦割りを打破するんじゃないんですか。何のための総理大臣ですか。あまりに冷たすぎる」と反発。「こんな政権では国民の命は守れない」と総理答弁に怒りを抑えられない様子だった。

 民法上では扶養義務について夫婦、直系血族(親や祖父母、成年の子どもなど)、兄弟姉妹のほか家庭裁判所が認める場合には叔父叔母・配偶者の兄弟姉妹にまで生活能力に応じて義務が生ずることに。ただ、コロナ禍の非常事態だけに扶養照会を省き、申請のハードルを引き下げる政治的措置が求められている。(編集担当:森高龍二)