1月末日、映画「男はつらいよ」の舞台にもなった老舗店、寛政年間に創業し、230年以上の歴史を持つ東京都葛飾柴又の日本料理店「川甚」がコロナの影響による業績悪化を理由に閉店した。現在、街の中から飲食店を中心に多くの店舗、企業が姿を消している。その中には創業50年以上、何百年という老舗も多く含まれている。
2月3日、東京商工リサーチが「2020年、業歴30年以上の“老舗”企業倒産調査」の結果レポートを発表した。レポートによれば、2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年、2年連続で前年を下回った。産業別では、製造業が33.4年と最も長く、最短は情報通信産業の14.9年となっている。
業歴30年以上の「老舗」企業の構成比は32.5%、前年から0.1ポイント上昇した。一方、10年未満の「新興」企業の構成比は27.4%で前年を0.7ポイント上回り4年連続で過去最高を更新している。コロナ禍のような不測の事態では、やはり新興企業の方が弱いようだ。
「老舗」企業は、代表者の高齢化に加え、事業承継や後継者育成に課題を抱えた企業が多い。一方で、「新興」企業は創業支援を追い風にしながらも財務基盤がぜい弱で事業計画が甘い創業も多く、コロナ禍の変化に対応できず倒産に追い込まれる企業が多い。20年の企業倒産は「老舗」企業の経営者の高齢化、「新興」企業への育成フォローが課題となったといえる。
20年に倒産した7773件のうち、業歴が判明した6591件を対象に分析した結果では、業歴30年以上の「老舗」企業は2147件で、その構成比は32.5%と約3分の1。構成比は前年から0.1ポイント上昇している。倒産に占める「老舗」の構成比は11年から10年連続で30%以上となっている。
「老舗」は、長年の事業経験に加え、金融機関や取引先とのパイプが太く、新型コロナ感染拡大など不測の事態への対応力は十分備えているが、一方で過去の成功体験に囚われ、外部環境の変化への柔軟性を欠く企業も少なくないといわれる。コロナ禍のように経済社会での行動様式が全般的に変容し、場合によっては大きな業態変更を迫られるケースも多いが、「老舗」の場合こうした小回りに弱点を持っていそうだ。さらに、代表者が高齢の場合、急速な環境変化について行けず、業績が悪化傾向をたどる場合も多く、事業承継や後継者問題などで倒産や休廃業を決断するケースも増えているようだ。(編集担当:久保田雄城)