近年、ESG投資の重要性が高まっている。ESG投資とは、もともとは2006年に当時の国際連合事務総長コフィー・アナン氏が提唱した「責任投資原則」(PRI)の中で提示されたもので、環境(Environment)、社会(Social)に配慮した経営を行い、企業統治(Governance)にも優れた企業を選別して投資をすることで中長期的な投資リスクを下げるという考え方だ。
企業価値に影響を与える要素として世界的に注目されており、とくに欧州を中心に急速に拡大しているが、日本でも厚生労働省所管の独立行政法人であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資原則に盛り込むなどしたことが契機となって、ESG投資への取り組みが活発化している。
そんな中、環境省は第2回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」の受賞者を発表。2月24日に表彰式を開催した。同省では、ESG金融やグリーンプロジェクトに関して積極的に取り組み、環境・社会に優れたインパクトを与えた投資家・金融機関等、また環境関連の重要な機会とリスクを企業価値向上に向け経営戦略に取り込み、企業価値と環境へインパクトを生み出している企業の取り組みを評価・表彰し社会で共有することを目的に「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」(環境大臣賞)を令和元年度に創設。2回目の開催となる今回は、投資家部門、間接金融部門、資金調達者部門、金融サービス部門の、4つの金融部門に、環境サステナブル企業部門を加えた合計5つの部門で表彰が行われた。
各部門の最高賞となる金賞にはそれぞれ、投資家部門ではBNPパリバ・アセットマネジメント、間接金融部門では、みずほフィナンシャルグループ、滋賀銀行、資金調達者部門は、東京建物、金融サービス部門は、ブルームバーグが受賞。
一見、投資家や金融機関が主役のようだが、これらの姿勢の変化が、投資される側の企業のESGの取り組みの後押しとなっていることに注目したい。
これに該当する環境サステナブル企業部門では、キリンホールディングスが金賞、積水ハウス、コニカミノルタ、ダイキン工業の3社が銀賞の栄誉に輝いた。
環境省の評価によると、キリンホールディングスは、環境にかかる卓越した情報開示の実践と、その開示姿勢、内容ともに極めて高いレベルであること、またCSV経営を起点とした経済的価値と社会的価値の融合という理念が十分に浸透し、取締役会およびグループCSV委員会によるサステナビリティ・ガバナンスも強力であり、日々の企業活動のプロセスの中にしっかりと根付いていること、さらにはTCFDへの取り組みもグローバル企業の中でも先進的になされていることなどが、今回の環境サステナブル企業部門での金賞の受賞理由として挙げている。
また、同部門で銀賞を受賞した積水ハウスは、早期から2050年の脱炭素化を目指した長期軸での環境戦略を掲げ、住宅の居住段階におけるCO2排出削減のためZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及を積極的に進めているほか、気候変動リスクをステークホルダーに情報開示したTCFDレポートの発行など、事業活動と一体化したESG経営を展開し、住宅メーカーとしてあるべきサステナビリティの方向性を示していることが高く評価されたと見られる。
「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」は、まだ創設されたばかりだが、日本のESG投資を考える上では今後、非常に重要なものとなりそうだ。金融から企業のESGの取り組みを加速させることで、日本企業の競争力向上とサステナブル社会の実現につなげてほしい。(編集担当:藤原伊織)