都道府県知事ら自治体首長の問題行為に対し有権者が解職を直接請求できる制度。代表民主制度を補完するこの制度が愛知県知事解職請求で悪用された問題が表面化している。
天皇の肖像を燃やす作品や慰安婦を象徴する少女像の展示などを含む企画展を含む愛知トリエンナーレを主催した愛知県の大村秀明知事を許せないとして高須クリニック院長・高須克弥氏や日本維新の会・田中孝博元愛知県議らが解職請求代表者となり、解職させるための署名運動を始めた。
愛知県下の選挙管理委員会には約43万人の署名が提出された。しかし、およそ36万人分は無効とされた。しかも署名している8000人は故人だった。無効とされた9割が複数の同一人物により書かれていた可能性が指摘されている。かなり悪質と言わざるを得ない。
大村知事は22日の定例記者会見で「九州・佐賀県でアルバイトを集め、延べ人数1000人、10日間にわたり、愛知県から名簿を持ち込んで、お金を払って、ひたすら書き写しの作業をさせたということのようだ。きわめて悪質と言わざるを得ない。強い偽造の意思が感じられる、組織的にやっている、わざわざ佐賀でやっているので隠ぺいの意思がある」と怒りを抑え、極めて落ち着いた面持ちで語った。
そのうえで「誰が指示し、誰のお金でやったのかということは追及されなければいけないのではないか。偽造は犯罪行為。事実関係を速やかに明らかにしていただいて、法と証拠に基づいて厳しく処断していただきたい」と期待した。
事実関係は捜査当局で明らかになるだろうが、一方で、「署名を呼び掛けてきた名古屋市長の河村たかし氏はじめ、高須院長、田中元県議の3人にも事実関係を明らかにする責務があると思う」とも提起した。
この問題を巡っては愛知県選挙管理委員会が今月15日に容疑者不詳のまま、地方自治法違反(署名偽造)容疑で愛知県警に告発した。25日には愛知県警が強制捜査に乗り出した。
武田良太総務大臣は24日の記者会見で「 愛知県選挙管理委員会が愛知県警察本部に対して告発状を提出したことは承知している。総務省としては、今後の捜査に予断を与えることのないようコメントは差し控えたいと思うが、直接請求制度は『代表民主制度を補完する重要な制度』。制度への信頼が損なわれることがないよう、徹底的な真相究明が求められる」と捜査による全容解明を期待し、解明の必要性を強く訴えた。
直接請求制度の悪用は絶対にあってはならないし、許されない。全国が愛知県警の捜査結果を注視し、捜査に期待していることを愛知県警には知っておいていただきたい。そして、早期の全容解明を望む。(編集担当:森高龍二)