立憲民主党の枝野幸男代表は7日の衆院本会議代表質問で、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に対し文化庁が補助金を全額交付しないと決めた問題を取り上げ「補助金事業への採択後に規約内容を変えた場合でも減額程度が一般的だ」と指摘し、不交付決定の議事録もない不透明な経緯での決定に問題を提起した。
そのうえで枝野代表は不交付決定が「文化庁が補助事業としての採択を決めた『審査委員会』の意見を聞くこともなく、密室の中で突然決められ、発表された」ことは「内容と手続きの両面で違法、不当」と訴え文部科学大臣に説明を求めた。
また枝野代表は「一部の展示中止にまつわる手続きが補助取り消しの理由であるなら、本末転倒だ。脅迫という犯罪行為に対し不本意ながら展示を中止したのであるから、責められるべきは、もっぱら脅迫者だ」と正論を展開。「文化庁は結果的に脅迫者を加担したといわれても仕方ない」と非難した。
また「多くの人は展示の内容が気に入らないからお金を出さないのだ、と受け止めている。そんなことが前例にされるなら今後は議論を起こすような展示は公的補助を受けるのは難しくなるのではないかという効果が働き、お上に迎合した、当たり障りのない表現だけに徹しようという事実上の事前検閲につながってしまう」と表現の自由を侵害することになると警告した。
枝野代表は「補助金不交付決定は違法・不当として撤回し、元の決定通り、交付すべきと考える。総理の考えを」と質した。安倍晋三総理は「補助金の交付についてはそれぞれの所管官庁・実施機関において法令や予算の趣旨に則り適正に実施されるべきものであり、あいちトリエンナーレについても文化庁において、そうした判断をした」と全責任を文化庁に振った。
一方、抗議のみでなく脅迫事件があり、開催3日で中止に追い込まれていた「あいちトリエンナーレ」の『表現の不自由展・その後』は8日午後から再開することが7日夜、愛知県の大村秀章知事が記者会見で発表。会期は今月14日までしかないが、憲法が保障する「表現の自由」確保につとめる姿勢が示された。
「表現の不自由展・その後」には従軍慰安婦を象徴する少女像などが展示されていることから、抗議が相次ぎ、脅迫事件も発生した。このため安全上の観点から止むを得ず中止されていた。
企画展再開に反対する名古屋市の河村たかし市長は再開されれば会場を訪ね、抗議の座り込みをするとの報道もあるが、展示を妨害しない限り「座り込み」は表現の自由だ。(編集担当:森高龍二)