馬毛島基地、地位協定見直しで地元理解を得よ

2021年03月28日 09:14

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現場責任を負う日本政府にとって両基地建設に対する責任の重さは言うまでもない

 今月開かれた日米両国外相と防衛相による「2+2」(日米安全保障協議委員会)と岸信夫防衛相・オースティン米国防長官による会談で、抑止力を継続しながら普天間飛行場の危険を除去するために「辺野古基地建設を日米協力して進める」ことが確認された。

 また米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練地として鹿児島県西之表市「馬毛島」への基地建設に「日米両国が緊密に協力していくことを確認した」(岸防衛大臣)。「米軍再編計画の着実な進展のためだ」としている。

 辺野古も、馬毛島も、その実現が国家間の約束になっていることを、菅政権・バイデン政権ともに再確認したことになる。現場責任を負う日本政府にとって両基地建設に対する責任の重さは言うまでもない。基地建設反対の声が地元に強い中、地元理解を得るために、政府は今から何をすべきかが問われている。

 まず工事を強行に進めるのではなく、地元民の『信頼』を得る努力をすることこそ、前進のための早道と理解することが必要だ。日本が独立国として対等な立場で交渉する環境を整えてこそ地元民から信頼が得られる。「日米地位協定の見直し」に積極的な行動をとることだ。

 くしくも西之表市の八板俊輔市長は馬毛島対策特別委員会で「住民の暮らしや健康に重大な障害があれば、憲法が機能して『飛行をやめさせる』。これが当然、法治国家の姿」と独立国としてあるべき姿を語った。在日米軍基地周辺の現況がそうでないことを提起した発言だ。

 低空飛行訓練やパラシュート降下訓練がよく問題にあがる。低空飛行訓練は戦闘即応体制の維持に必要不可欠な訓練だ。その訓練は否定できない。そのため訓練にあたって「地元住民に与える影響を最小限にする」。このことは日米合同委員会で合意されている。

 「原子力エネルギー施設や民間空港などの場所は安全かつ実際的な形で回避することや人口密集地域や学校・病院など公共の安全に係る建造物に対して妥当な考慮を払う」ことなどが取り決められている。しかし、その実効性において沖縄の状況からは疑問符が付いてくる。

 低空飛行訓練やパラシュート降下訓練なども「米軍の運用即応態勢上の必要性から不可欠と認められる場合」には枠を外れて運用されることが例外的に認められているからだ。その例外は良く利用される。日米対等なら例外は文字通り例外にとどまるものだ。

 馬毛島では米軍空母艦載のF35B(短距離離陸垂直着陸のステルス戦闘機)の離発着訓練が行われる。自衛隊も訓練する。午前から翌日午前3時まで一定の期間、連続して繰り返される。

 騒音問題は馬毛島から10キロ程度にある西之表市市街地の住民にとって大きな懸念だ。40キロ離れた屋久島でも騒音などの影響がないか、懸念する声があるという。馬毛島をはじめ周辺に生息する生態系への影響を懸念する声もある。訓練機は屋久島上空を「基本的に飛ばない」そうだが、あらゆる事態を想定して訓練がなされる以上『例外的に』飛行ルートになることは否定できない。

 こうした地元の人たちの懸念や不安にこたえ、懸念を払しょくする具体的対策、客観的・科学的資料をそろえたうえでの説明、そうした努力の上でなければ政府説明への信頼も生まれない。不安も解消しない。

 日本政府が住民の暮らしや健康に重大な障害があれば『米国に飛行をやめさせる』。それができるレベルに立てる交渉を菅義偉総理はバイデン大統領との会談時に提起すべきだ。そして「2+2」のテーブルに地位協定見直しを乗せることに理解を得ていくことが必要だ。思いやり予算の新たな交渉が始まるこの1年こそ、そのチャンスととらえるべきで、この機会を逃すべきではない。(編集担当:森高龍二)