菅義偉総理は13日、東京電力福島第一原発事故により増え続ける放射性物質による汚染水を多核種除去設備で処理した水の処分について「海洋放出」を決定した理由について「処理水処分は原発の廃炉を進め、福島復興を成し遂げるために避けて通れない課題であり、海洋放出が現実的と判断した」と解決策として現実的などと語った。
そのうえで「今後、準備作業を進め、2年後をめどに海洋放出を開始する予定だ」とし「トリチウムの濃度を国内の規制基準の40分の1以下にし、安全性を確実に確保した上で実施する。風評被害により、地元の皆様方の復興への希望が失われることがあってはならない。科学的な根拠に基づく情報発信を含め、政府一体となって全力を尽くす」とした。
しかし、タンクの貯蔵処理水(125万トン)の約7割には『トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っており』(経済産業省)希釈で済む問題ではない。すでに2018年に貯蔵処理水の約8割から「ストロンチウム90」「ヨウ素129」などの放射性核種が含まれていることが発覚。「ヨウ素129」や「ルテニウム106」なども基準値を超えて含まれていた。また「炭素14」に関して新たに問題が提起されている。
国際環境NGOグリーンピース・ドイツのシニア原子力スペシャリスト、ショーン・バーニー氏は汚染処理水には放射性物質の「炭素14」も含まれており「遺伝子損傷を引き超す危険がある」と警鐘を鳴らす。
ショーン氏は「日本政府は福島県民をはじめ日本に住む人々、近隣諸国に対して、太平洋に投棄される汚染水に危険なレベルの『炭素14』が含まれていることを説明していない」と指摘。
ショーン氏は2020年の報告書で「炭素14の半減期は5370年。数千年にわたって環境中に存在し、炭素はすべての生物に基本構成要素として組み込まれることから、長期的に見れば集団被曝線量の主な要因となる。このため炭素14は人間の細胞DNAを損傷する可能性がある。これについて日本政府と東電はタンクに貯蔵されている汚染水は『処理済み』でトリチウムしか含まれていないととれるような説明を続けている」と提起しており、政府はこの提起にも正確に国民に説明する必要がある。
またネット上では「安全性が確保されるというのであれば、東京湾に放出すればよいのではないか」「トリチウムについて、WHOの飲料水基準より7分の1の基準にして放出するというなら、関係閣僚会議で海洋放出を決定した閣僚らが飲料して安全性を示してほしい」など、政府対応に不信感を示す声もあがっている。(編集担当:森高龍二)