医療現場の医師ら「五輪中止」を菅総理に訴え

2021年05月16日 08:22

 全国の勤務医でつくる「全国医師ユニオン」(植山直人代表)が13日、「東京オリンピックは危険な変異株ウイルスの結集と拡散さらに新たな変異株ウイルスを生む環境を作り出すことになる。ワクチンが効かないなどのこれまでにない危険な変異株ウイルスが出現した場合には東京オリンピック型ウイルスとして、世界の人々を苦しめることが強く危惧される。コロナ禍においては安心・安全なオリンピックの開催などありえない」として、菅義偉総理に「オリンピック開催の中止を強く求める」要請書を出した。

 植山代表は「現在求められていることは、オリンピックは危険な変異株ウイルスの拡大と新たな変異株ウイルスを 生む環境を作り出すことになることを理由に、日本政府がオリンピック参加を目的とした選手団の入国 を認めないことを宣言することである。日本政府は国家として国民の生命・財産を守る責任を持っており、WHO を傘下に持つ国連の加盟国として世界各国に責任を持っている。日本政府は国民と国際社会へ の責任を果たさなければならない。オリンピックの開催の可否に関しては、IOC や東京都ではなく日本 政府が明確な決断を行う必要がある。結果的に IOC や東京都はこれに従うことになるが世界的なパンデ ミックという非常事態下ではやむを得ない」と強く中止を求めている。

 また要請書では「昨年、政府は新型コロナウイルスを克服した証としてのオリンピックを開催するとしていたが、克服した証どころか、むしろワクチン接種では世界に大きな後れを取っている」と指摘。

 そのうえで「ワクチン接種率が低く感染拡大が続いている国には世界のスポーツ選手を招く資格はなく、現在の政府の姿勢は各国の選手に対して極めて無責任で失礼と言える。世論調査によれば、東京オリンピックの中止や延期を求める声が多数を占めており、国民に自粛を求め深刻な被害を強いていながらオリンピックのみを例外にすることなど許されることではない」と断じた。

 また「地域医療を守ることを理由に過労死ラインの2倍働くことを求めながら、感染拡大のリスクを顧みずに地域医療を崩壊させかねない東京オリンピック を開催し、しかも最前線で新型コロナウイルスと闘う医療従事者にボランティアを求めるなどあまりに も一貫性がなく無責任であると言わざるを得ない。いま医療関係者に要請すべきは医療体制の確保とワ クチン接種への協力であり、スポーツ大会への協力などではない」と訴え「1日も早いオリンピック開催中止の決断を求める」と医療現場から強いメッセージを寄せる内容になっている。(編集担当:森高龍二)