米中対立、サプライチェーンの脱「中国依存」に大きな変化なし

2021年05月19日 06:53

画・米中対立、サプライチェーンの脱「中国依存」に大きな変化なし。

日本総研が米国におけるサプライチェーンの脱「中国依存」のレポート。依存が強まる品目はプラスチック

 トランプ政権下での米中摩擦の影響で中国経済が減速、この影響で日本の景気回復を牽引してきた半導体製造装置などの中国向け輸出が大幅に縮小、2018年秋から日本経済は後退局面入りした。さらに20年初頭からの新型コロナ感染症の影響で中国経済が停止、世界的にサプライチェーンが大混乱となった。

 こうした中でサプライチェーンの見直しと脱中国が囁かれたが、中国経済が早期に回復するなど、今のところサプライチェーンの大きな変化は起こっていないようだ。しかし、バイデン政権でも中国封じ込めの基本戦略は変わっておらず、今後も米中摩擦による様々なリスクが懸念され、サプライチェーン見直しの中で脱中国が進むのかどうか注目される。

 5月12日、これに関連し日本総研が米国における脱中国の動向を取りまとめたレポート「サプライチェーンの脱『中国依存』はどこまで進んだか」を公表している。これによれば、米国の対中輸入は関税引き上げの影響で19年に大幅に減少、新型コロナがなければ20年の米国の輸入に占める中国の割合は13%程度まで低下する見通しであったが、中国の早期回復により逆に18.6%まで上昇した。この中で、中国の生産・輸出機能の代替を担ったのがベトナムと台湾で、中でもベトナムの台頭は著しく「一人勝ち」の状態だ。

 20年4月以降の対中輸入の前年比で依存度を見ると、(1)プラスチックなど中国依存が強まっている品目、(2)機械、がん具・ゲーム機など変化無しの品目、(3)布・衣類など脱中国が進んでいる品目、(4)電気・電子機器、家具・寝具など一時的に脱中国が進んだが鈍化しそうな品目の4つに分けられ、品目により違いはあるが全体として脱中国の動きは顕著ではない。パソコンとスマートフォンについては中国依存のサプライチェーンの見直しの動きすら現れていない。中国依存度が低下している品目も代替地はベトナムで、その半分は中国製で実質的に脱中国とは言えない構造だ。サプライチェーンにおける中国の地位は当分揺るぎそうにない。

 バイデン大統領はサプライチェーンを見直す旨の大統領令に署名したが、半導体以外は中国に依存しない安定的なサプライチェーンの構築は難しい。しかし、レポートでは「同政権が、雇用重視の保護主義政策、対中国包囲網の構築、人権重視外交を鮮明にすることによって、脱『中国依存』は長期的かつ不可逆的な動きに発展する可能性もある」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)