コロナ禍でテレワークが普及しはじめ、日本のDXも加速し始めた。コロナ禍では人と人の接触が忌避され営業など顧客対応業務はテレワークには馴染まないとされた。しかし、営業業務のDXを加速させている企業ほどコロナ禍によく適用し業績を上げている。
顧客対応のDXはコロナ禍ゆえに行われているものではなく時代のトレンドである。この戦略の中で用いられるのがCX(顧客経験)という概念であり、これは顧客の製品の認知、購入の検討、購入後のサポートまでのプロセスおける体験または価値を表し、顧客がそのプロセスから得られる価値の体系のことである。CXを販売戦略に組み込み顧客からのロイヤリティを勝ち取ることがDX時代の企業戦略の課題とも言える。
6月7日、ITコンサルタントであるガートナーの日本法人が「日本企業のCXへの取り組みに関する調査」の結果レポートを公表した。レポートによれば日本の企業においてもCXへの関心は高まっているようだ。しかし、日本企業におけるCXプロジェクトは総じて進捗が芳しくない状況であるという。
ガートナーが2020年11月に実施した調査においては、CXプロジェクトの状況について「進行中・稼働済み」と回答した企業の割合は10.2%にとどまった。年々の推移を見ると18年には4.2%、19年は6.6%とゆっくりではあるが拡大しているようだ。しかし、最も多い回答は、「必要だが未検討/進捗が遅い」が31.3%と約3社に1社を占め、「必要ない」が18.1%、「知らない/分からない」が29.2%となっている。18から20年の調査結果を比較すると、「進行中・稼働済み」、「検討中」など何らかの取り組みを進めている企業の割合は増えているものの、新型コロナによるビジネスへの影響があったにもかかわらず、日本企業ではCXプロジェクトの進捗が極めて遅いことが浮き彫りになった。
日本におけるCXの推進責任者をみると、「営業担当役員」が31.7%、「役員でない特定のリーダー」14.0%が多くなっている。シニア・ディレクターの川辺謙介氏は「CXプロジェクトには多くの部門が関係するため明確かつ強力なリーダーシップが求められる。仮にそのようなリーダーが不在のまま各部門から集まるプロジェクト・メンバーがCXの目的を理解せず適切な行動を取らないような状況では、組織間の隙間を埋めることができないままとなり、プロジェクトが思うように進まない」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)