コロナ以前には、多くの企業が働き方改革の中でテレワーク制度を設けてきたものの、実際にこれを活用する者は数パーセントという状況がしばらく続いていた。2020年4月の新型コロナ感染症の流行拡大に伴う緊急事態宣言の発出は、テレワーク利用拡大の大きな契機となったが、その後のテレワーク普及率の推移はほぼ横ばいで推移しており、普及は頭打ちになっている状態だ。しかし、実際にテレワークを経験した者のテレワーク継続意向の割合は増加傾向で、テレワーク制度は働き方の一つとして徐々に根付いてきている状況のようだ。
8月17日、パーソル総合研究所が7月30日~8月1日に従業員10人以上の企業・団体に勤務する20~59歳の従業者2万人超(正規雇用2万514人、非正規4931人、公務員等364人)を対象に実施した5回目の「テレワーク実態調査」の結果を公表している。これによれば、正社員のテレワーク実施率は全国平均で27.5%、非正規では17.6%と低くなっており、公務員等では14%とさらに低くなっている。
地域別では、東京都が47.3%でトップの他、やはり感染の広がりが著しい首都圏や大都市部で実施率が高い。正社員の実施率の推移を見ると、20年の3月では13.2%だったが、宣言発出の4月に27.9%に急増、宣言解除後の5月下旬には25.7%に減少、11月は24.7%とさらに減少、そして今回調査では27.5%に増加しているものの、長期的にはほぼ横ばいだ。五輪の開催された東京都でも20年4月に49.1%、11月45.8%、そして今回47.3%と感染拡大や五輪開催には大きく影響されず、ほぼ横ばいで推移している。
テレワーク実施者のテレワーク継続希望の割合は、20年4月が53.2%、5月69.4%、11月78.6%、そして今回78.6%と増加傾向で推移しており、テレワークという勤務形態が経験者には特別なものではなくなってきているようだ。
五輪開催に伴う「テレワーク・デイズ」の認知率は23.2%と低く、レポートではテレワーク実施の動機は感染拡大や五輪開催に伴う人流抑制を意識したものではないと分析している。一方で今後のテレワーク方針について所属組織からの「案内がない」との回答は58.4%に及んでおり、「今後の自社の働き方の方針を定め、組織内に周知すべき」とレポートは指摘している。(編集担当:久保田雄城)