自動車産業は100年に一度の大変革期にあるといわれる。世界市場は既に駆動システムの大変革である電動化へ大きくシフトし始めている。電動化技術のカギとなるのはPM(パワーモジュール)用の半導体だ。世界で初めてSiC(炭化ケイ素)半導体のPMを搭載し、電気自動車として驚異の航続距離を実現したテスラのモデル3が米国、欧州を中心に販売シェアを急速に伸ばしている。これまでSi(シリコン)半導体がxEV(ハイブリット車と電気自動車)向けPM用として主流であったが、2022年からSiC-PMへのシフトが本格化しそうだ。
11月24日、矢野経済研究所が「車載用パワーモジュールの世界市場に関する調査(2021年)」の結果レポートを公表している。これによれば、21年の車載用PMの世界市場は出荷額ベースで2656億9200万円、前年比43.1%増の見込みだ。このうち、Si-PMが2150億3600万円、同39.3%の増加、SiC-PMは506億5600万円、同61.4%の大幅な増加と見込まれている。レポートでは「22年以降は欧州自動車メーカー(OEM)で搭載が増加、本格的にSiC-PM市場が立ち上がる」と見込んでいる。
22年から25年にハイエンドEV(高級・大型EV)の市場投入が活発化する。ハイエンドEVでは、走行性能を向上するために駆動モータの高出力化と車内空間を広くするためにEアクスルの小型化が求められる。インバータにSiC-PMを採用することで2つの要求を実現できるため、EアクスルでのSiC-PMの搭載が活発化している。また、航続距離を延ばすためには大容量バッテリが必要で、高効率化と充電時間短縮のために800Vシステムが進展しており、低損失の面からもSiC-PMのインバータがEアクスル用として需要を拡大すると見込まれる。
2025年に向けて量産が本格化し量産技術が向上すると、SiCパワー半導体のコストダウンが進み、SiC-PMはハイエンドEVからミドルエンドEVの一部にまで採用が拡大すると予測される。25年の車載用PM世界市場は6354億7400万円、うちSi-PMは4552億8600万円、SiC-PMは1801億8800万円に拡大すると予測。26年頃から車載用SiC-PMは本格的な拡大基調に入り、30年にはSiC-PMの市場規模はSi-PMの4696億1000万円を上回り、5642億2800万円に達するとレポートは予測している。(編集担当:久保田雄城)