コロナ禍の中ではあるが、約10年ぶりとなる学習指導要領の改訂が始まっている。小学校ではすでに昨年から、中学校では今年、そして高校は来年と順次スタートする。
改定の骨子は、「新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実」という方向性のもと、「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養(かんよう)」「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」という3つの柱を立て、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現を目指すというものだ。そして、この改定の根本には「学校で学んだことが子供たちの「生きる力」となって、明日に、そしてその先の人生につながってほしい」という思いが込められている。各学校や自治体では、文部科学省が打ち出したこの指針に沿って、新しい時代、そしてコロナ時代における学びのカタチを模索しているようだ。
例えば、京都市の立命館小学校では今年2月 から、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームの協力のもと、5 年生全119人を対象に、森林保全活動やプラごみ削減について考えるSDGs環境授業を実施している。同学年では現在、社会科で「林業」をテーマに学んでいることから、SDGs環境授業では、アキュラホームが開発し、2019 年のG20 大阪サミットでも採用された「木のストロー」を事例に、SDGsの理念や目指すゴール、林業が抱える課題などを知り、それらの課題解決に向けた取り組みについて考えているという。2月に行われたオンライン授業では、アキュラホームの社員によって「木のストロー」 誕生までの経緯や誕生秘話から始まり、日本の林業が抱える課題、林業とSDGsとのつながりなどにまで及ぶ講話が行われたが、身近なストローが題材になっていることもあって、児童たちにも理解がし易く、SDGsと自分たちの生活とのつながりを強く意識するきっかけになったという。また、3月15日には、アキュラホームの授業内容を踏まえて、児童が社会課題解決に向けたプランを専門家に発表する発表会も行われた。インプットだけでなく、こうしたアウトプットの機会を設けることで、児童たちの環境に対する意識やSDGsへの理解が醸成されることはもちろん、児童らの素直で自由な発想やフレッシュなアイデアが、林業や社会に刺激を与えることも期待できるだろう。
また、三重県鈴鹿市立椿小学校では、「英語ノート」に盛り込まれたクイズやゲームに身近な素材を取り入れるなどのアレンジを加えることで、子どもが意欲的に参加しやすくなるような工夫を行っている。英語の習得だけでなく、挨拶や会話など、主体的なコミュニケーション能力を養うこともねらいの一つだ。
東京都台東区立金曽木小学校では、公益施設の中でも身近に利用する郵便局に焦点を当て、郵便物がどのように運ばれているのか、郵便局の中でどのような仕事が行われているのかを調べる活動や、実際に郵便局を見学する活動などを通して「仕事」を考えるほか、児童たちも実際に、プログラミングや学校内郵便局等を通して郵便の仕事を疑似体験することで、情報技術の進展がどのように生活に関わっているかを考える授業を導入している。
新しいカタチの授業は、学校や自治体、そして協力している企業や団体によっても様々だが、いずれも高度で、よく練られた魅力的な内容で、大人でも授業を受けてみたくなるようなものが多い。世間はまだ、コロナ禍の混沌の中にあるが、子どもたちには授業を通して「生きる力」を身につけてもらい、こういった状況にも柔軟に対応できる大人に育ってほしいものだ。(編集担当:今井慎太郎)