パーキンソン病。「家事労働の継続」が症状を長期的に改善。「1~2時間の運動習慣」も有効。~京大が解明

2022年01月23日 10:41

画・パーキンソン病。「家事労働の継続」が症状を長期的に改善。「1~2時間の運動習慣」も有効。~京大が解明。

京大がパーキンソン病における運動習慣の長期効果を確認。日常的身体活動量と運動習慣を維持すれば、長期的なパーキンソン病の症状の経過の改善と関連する可能性があることを解明。家事活動を継続して行うことで日常生活動作能力低下の進行の改善との有意な関連。

 パーキンソン病は神経難病の中でも患者の多い疾患で、好発年齢は50~60歳代だ。筋肉運動を調整する脳神経でドパミン生産が困難になる難病であり、残念ながら現時点では完治させる治療法はなく、Lドーパなどの薬物で症状の緩和と進行の抑制をするのみである。症状は「振戦」「固縮(筋肉の緊張)」「寡動・無動(運動の遅さ)」「姿勢反射障害(反射運動の障害)」などで症状の程度にもよるが生活の質は著しく低下する。現在のところ疾患それ自体を改善する治療法はないとされているが、長期的な運動習慣が疾患の進行の予防と改善につながるという研究結果が発表された。

 1月13日、京都大学の研究グループが「パーキンソン病における運動習慣の長期効果を確認」したと発表した。これまでも当該疾患では、日常的身体活動量や運動習慣は少なくとも半年程度の短期的な症状改善には重要と考えられてきた。しかし、数年以上にわたる長期的効果は不明であった。本研究では国際多施設共同観察研究であるPPMI(Parkinson’s Progression Markers Initiative)研究のデータを用いて237名の患者データに種々の交絡因子を調整した多変量線形混合モデルや傾向スコアマッチングを適用し、日常的身体活動量と運動習慣の5~6年程度の長期における臨床症状の交互作用効果を探索した。その結果、日常的身体活動量と運動習慣を維持すれば、長期的なパーキンソン病の症状の経過の改善と関連する可能性があることが示された。

 具体的には、1~2時間程度の中等度以上の運動習慣を週に1~2回程度継続することが、主に歩行・姿勢の安定性の進行の改善と有意な関連を認め、また1日に2~3時間程度の労働に関連した活動を継続することが、処理速度低下の進行の改善と有意な関連が認められた。さらに、家事に関連した活動を継続して行うことは、日常生活動作能力低下の進行の改善との有意な関連をもつことも認められた。研究チームは「本研究の成果は、今後の研究において、運動介入によるパーキンソン病の進行を抑制する方法論の確立の第一歩になると考えられ、また、個々の患者に合わせた運動介入の重要性も示唆する」としている。(研究グループは、京都大学大学院博士課程学生:月田和人、同:酒巻春日、同教授:高橋良輔ら。本成果は、2022年1月13日に米国の国際学術誌「Neurology」にオンライン掲載されている)。(編集担当:久保田雄城)