ロシアによるウクライナへの侵略行為に特に懸念が深まるのが核使用をにおわせるロシアの威嚇行為と原発への攻撃。「万一にも原子炉が破壊されれば、福島原発やウクライナのチェルノブイリ原発の重大事故をはるかに超える放射能による世界規模の大惨事につながる危険がある。人類全体の生存を脅かす犯罪行為だ」(日本共産党志位和夫委員長)。
侵略国による原発への砲弾、制圧行為は、いかにミサイル攻撃から原発を守るか、被爆国日本が国是としてきた『非核3原則』を無視し、核シェアリングの議論検討を「タブー視すべきでない」とする安倍晋三元総理らによる提唱より、はるかに、政府・国会が議論すべき重要案件は、有事での原発の安全確保であることを、皮肉にも、ロシアの蛮行が今回示した。
日本では現在10基が再稼働し、7基が再稼働許可を得ている。10基は許可申請中で、申請していないが今後の申請予定も9基ある。
政府は原発再稼働に「いかなる事情よりも安全性を最優先」と口をそろえて国会答弁している。その一方で原子力規制委員会が「安全と認めたものの再稼働を進める」と原発再稼働に積極姿勢。これを後押しするように、今月10日には自民党電力安定供給推進議員連盟が原発の早期稼働を求める決議を全会一致で採択した。政府に決議文を提出し、原発再稼働を促す考えだ。
自民党内には原発のリプレースや新増設を業界団体や経団連と共に必要と促す議員もいる。「2050年カーボンニュートラルの実現に原発は欠かせない」と強調する。
しかし、その前に、原発がミサイル攻撃を受けた際の放射能汚染の甚大な被害をどう防ぐのか。「いかなる事情よりも安全性を最優先する」というのであれば、この問題を原発再稼働の例外にしてはならない。
2017年当時、長妻昭衆院議員が予算委員会で原発がミサイル攻撃を受ければ、核ミサイル着弾のような効果が狙えると安全面での体制を質したが、原子力規制委員会は「ミサイル攻撃は国家間の武力紛争に伴って行われるもので、その対応を想定していない」と驚くべき答弁だった。
あらゆる事態を想定して「原発の安全確保」ができているか、判断するのが筋。危険度の高い「原発」に想定外は決して認められない。認めてはいけないだろう。
旅客機を使ったテロはもちろん、ミサイル攻撃も想定し、安全対策ができているか、原発再稼働基準の見直し、点検をこの際に行うことが必要だ。
旅客機などを使った襲撃で被害を受けた際の対応などに義務付けられた「特定重大事故対処施設」の設置に関して、未完成のままに稼働している「関電美浜3号機」「関電大飯3号機、4号機」「九電玄海3号機、4号機」の5基に関しては、少なくとも完成するまで稼働を止める「安全最優先」を徹底すべき。
特別重大事故対処施設は建設中だからという再稼働許可は「甘えの構造」を生むことになりかねない。計画していた時期に完成できない、というのも問題だ。まず、そこから安全策の徹底を原子力規制委員会も、政府も、原発政策において最重要案件として実現していただきたい。(編集担当:森高龍二)