コロナ禍でサプライチェーンが混乱している中、ウクライナ侵攻が発生した。当然、欧米日はSWIFT排除を初めロシアに対する強い経済制裁を直ちに実施した。欧米主要国は既にパンデミックからの出口戦略として経済正常化を推進しており、急速な需要回復でエネルギー・原材料価格の高騰が起こっている中、エネルギー・穀物輸出大国であるロシア経済の排除はさらなる価格高騰、サプライチェーンの混乱を生み出している。ロシアに投資している企業は主に大手であるが、大手企業は国内取引企業も多く、直接・間接の影響は大きい。
3月1日にトヨタが国内全工場を停止した。取引先部品メーカーである小島プレス工業がサイバー攻撃を受けたからだ。ウクライナ侵攻後サイバー攻撃が急増しているという。14日、やはりトヨタグループのデンソーがランサムウエアの攻撃を受けた。誰が行っているかは不明だが混乱に乗じたサイバー攻撃は増加傾向だ。既にトヨタはサンクトペテルブルク工場での稼働と完成車の輸入を停止している。様々な要因でサプライチェーンは見直しを迫られ混乱しており、部品メーカーを初めとする取引企業に与える影響は極めて大きい。さらにトヨタは18日、22日にも国内工場の追加稼働停止を行っている。16日深夜の地震で仕入れ先の部品メーカーが被災したからだ。分散型のサプライチェーンでのリスク要因は増大している。
3月23日、東京商工リサーチが「トヨタグループ国内取引先状況調査」の結果を公表した。これによれば、トヨタグループと直接取引のある1次、間接取引のある2次の取引先数は、仕入先が3万2435社、販売先は2万567社となっている(両者とも重複を除く)。1次仕入先は1万951社存在し、業種は製造業が5352社とそのシェアは48.8%と取引先全体の約半数を占めている。資本金別に企業規模を見ると、1次仕入先の1万951社では、1000万円以上5000万円未満が6209社で構成比は56.7%、約6割を占め、1億円以上が1731社、同15.8%、5000万円以上1億円未満が1490社、同13.6%と続き、1億円未満が84.2%と中小企業が8割を超えている。1次仕入先の所在地域は、やはりトヨタおよび関連企業の本社・工場が集中している中部地方が4627社で構成比42.2%と4割を超えて突出している。
コロナ、戦争、自然災害、サイバーテロなど、サプライチェーンを混乱させるリスクは増大している。レポートは「種々の問題が山積する自動車業界は、典型的な下請け構造ですそ野が広く、直接・間接に関わる中小企業への影響が注目される」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)