侮辱罪厳罰化へ刑法改正案 衆院通過 参院へ

2022年05月20日 12:19

 ネット上の誹謗中傷対策として侮辱罪に「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」としている現行の法定刑に「1年以下の懲役・禁固もしくは30万円以下の罰金」を新設し「厳罰化」する刑法改正案が19日の衆院本会議で採決され、自民、公明、維新など賛成多数で可決。審議の場は参院に移った。改正案は懲役刑と禁錮刑を一本化し「拘禁刑」を創設することも盛り込んでいる。

 また法案は3年後に「表現の自由」を不当に制約することになっていないか、外部有識者を交えて検証し、結果に基づき必要な措置を講ずるとする付則を盛り込んだ。

 法務省と警察庁は「正当な言論活動は処罰の対象ではない」として、侮辱罪での現行犯逮捕は「実際上は想定されない」とする政府統一見解を示した。

 この政府統一見解を捜査機関、国民に周知徹底するとともに、3年後の検証で公共の利害に関する場合は罰せられない特例を侮辱罪に創設することを検討することが付帯決議された。

 今回の法案には立憲民主党と日本共産党は反対した。共産の本村伸子議員は反対討論で「侮辱罪の法定刑に禁錮・懲役を追加する厳罰化は悪質な誹謗中傷対策として出たものだが、言論・表現を処罰対象にしながら、具体的にどのような表現が侮辱罪にあたるのか、審議を通じても全く明らかになっていない。侮辱罪は過去に自由民権運動の弾圧に用いられた経緯がある」と指摘。

 そのうえで「今日でも(2019年の参院選で当時、安倍晋三自民総裁が街頭演説していた際、ヤジを飛ばした男女2人が北海道警の警察官らにその場から排除された事件を取り上げ)北海道警のヤジ排除事件でみられるように、捜査当局が政治的な表現の自由を侵害している。札幌地裁は道警の行為を違法・違憲と判断したが、政府は全く反省していない」と述べたうえで「権力者や政府の政策に対する批判・批評を侮辱と認定し、捜査当局が恣意的判断をしないとなぜ言えるのか」と強く警鐘を鳴らした。参議院での慎重な審議が求められる。(編集担当:森高龍二)