動き出したシャープ、ヘルシオの名をもつ炊飯器

2013年02月26日 19:56

  「美味しいお米が食べたい」テレビ番組でタレントなどが度々紹介していることもあって、近年「炊飯器」に対する関心が高まっている。業界全体でも堅調な伸びをみせているが、その中でも昨年秋に発売されたシャープの炊飯器がとくに大きな注目を集めている。その炊飯器の名は「ヘルシオ炊飯器」。そう、同社の強力な超人気ブランドである「ヘルシオ」の名を冠した炊飯器なのだ。

  実は、シャープ<6753>はこれまで、炊飯器市場においては、ほとんど存在感のなかったメーカーといわれていた。ところがここにきて、洗米も釜の中で行なえる前代未聞の「かいてんユニット」を搭載したヘルシオブランドで、高級炊飯器市場に殴り込みをかけてきたのだ。

  ヘルシオ炊飯器の最大の特徴は、長さ約10センチの棒状ウイングが付いた2本の「かいてんユニット」だ。生物模倣学をもとに生み出されたこのユニークな回転翼は、ペンギンの後退翼の仕組みを応用したもので、上ブタに装着して使用することで、内釜に「回転水流」「上昇水流」「湧き出し・吸い込み水流」という3つの水流を起こす。もちろん、ただ拡販するのではない。このユニットの作り出す水流は、白米の飛び散りを減らしつつ、魚群のようならせん状の水流を作り出してくれる。お米同士の衝突が最小限になるので、ふっくらとやさしいお米が炊けるというわけだ。

  かいてんユニットの最初の仕事は「洗米」。米の量や水温に応じて時間は変わるが、およそ30秒から1分程度。手による洗米だと強く研ぎ過ぎて、米の表層部にある栄養素やうま味成分が剥がれて流出することが多いが、ユニットでやさしく攪拌することで、データ上では、米に含まれるビタミンB1やマグネシウムが通常の洗米に比べて2割程度多く残存させることに成功している。ちなみにこれは、職人が3年以上修行して会得するような洗米技術だという。その後、「浸し」、「加熱」、「沸騰」の各工程でも「かいてんユニット」が水流を生み出し、活躍する。

  ヘルシオ炊飯器の開発者は、とにかく美味しい米をたくことを目指し、温度にムラのない炊き方を追求した。そして、温度ムラをなくすためには釜の中に「直接、水流を与える」という結論に至り、この前代未聞の回転翼が生まれたのだ。

  2009年の開発着手から、試行錯誤を繰り返し、実に3年の月日を経て、2012年10月1日に世に送り出された「ヘルシオ炊飯器」は、釜の厚さや操作部などの違いによって2タイプが用意され、実勢価格はそれぞれ7万円前後と9万円前後という高級品ながら、在庫が不足するほどの人気商品として、消費者に迎えられた。

  変り種の炊飯器としては、例えばパナソニックが昨年発売した、スマートフォンでタッチするだけで炊飯設定ができる炊飯器などもユニークだが、利便性よりも、とにもかくにも「美味しいお米が食べたい」という欲求の方が、日本人のDNAには訴えかけるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)