JTB総研が実施した「東日本大震災後の生活行動や消費の変化に関する調査」によると、節電・節約意識は一向に衰えを見せておらず、むしろ高まる傾向にある。また、水や食料の備蓄に関しても同様であり、震災後に初めておこなうようになったことの中で、「今後も継続しておこなうと思うこと」のトップは「飲料水の備蓄」、3位が「食糧の備蓄」であった。そして、震災から間もなく2年。震災直後に購入した備蓄品が賞味期限を迎えることを想定した、新たな備蓄用飲料水・食糧が各メーカーから発表されている。
三菱レイヨンのグループ会社である、三菱レイヨン・クリンスイが備蓄用飲料水ビジネスに事業参入し、企業や自治体向けに昨年12月3日から備蓄用水を販売開始。浄水器や医療用水処理装置の開発により培った同社の浄水技術を活用して保存に適した水を精製しており、製造日から5年間の長期保存が出来ることが特徴となっている。同社は3月1日から、この長期保存水を家庭向けに一般販売を開始すると発表しており、備蓄水の買い替え需要に対応する。
また、2月21日からは日本生協連もプライベートブランドから長期保存を特徴とする商品の発売を開始。こちらも賞味期限まで5年以上を残した状態で販売され、生協ならではの安価も特徴となっている。
さらに飲料水だけでなく、野菜飲料でもこの傾向は見られる。カゴメ は、震災時に、避難生活が長期化する中で、被災地食の栄養バランスの乱れが問題視されるようになったことを受け、備蓄品としても活用できるよう賞味期限を延長した「野菜一日これ一本」190g缶を発売。一般的なペットボトルのミネラルウォーターの賞味期限は2年だが、本商品は3年を賞味期限とすることで、備蓄品としてより利用しやすくしている。なお、従来の商品設計に変更はないものの、安全性に問題が無いことを確認しているという。
その他、日清食品は、防災備蓄用のインスタントラーメン「チキンラーメン保存缶」「カップヌードル保存缶」を限定発売。通常の「チキンラーメン」(袋麺)の賞味期間は6ヶ月間、「カップヌードル」(カップ麺)は5ヶ月間であるところ、3年間の保存が出来る商品となっている。また森永製菓も、業界初となる2年間保存可能な缶入りタイプのチョコレートを2月5日から発売するなど、備蓄用飲料水・食糧の商品展開が広がりを見せている。
確かに、いざ災害が発生した際に、賞味期限・消費期限が切れた備蓄用品しかなく、それを利用したが故に体調を壊すといったような事態は避けられるべきであろう。その為には長期保存が可能な商品の広がりは歓迎すべきである。一方、長期保存が可能となると、過剰な安心感から、かえって期限等を失念しやすくなる可能性があるのではないだろうか。それだけ備蓄用品が必要となるような事態が発生していないということで良いことなのかもしれないが、「備え」としての意味が薄れるであろう。長期保存を可能にするのと同時に、1年に1回、備蓄用品の確認を促すような商品の登場・普及も必要なのではないだろうか。(編集担当:井畑学)