夏に向けて、すでに家電量販店などでも節電対策を打ち出した電化製品が並び始めている。そんな中、東京ガス<9531>とパナソニック<6752>は、家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品を共同開発し、2013年4月から発売すると発表した。
エネファームとは、何だろうか。名前ぐらいは聞いたことがあっても、実際にどんなものか知らない人も多いだろう。エネファームとは、「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」の愛称であり、都市ガスやLPガス、灯油などの燃料から、改質器を用いて水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電するシステムのこと。発電時の排熱は給湯に利用される。しかし、発電が主な目的ではなく、あくまでも節電を目的として開発されたものだ。
エネファームのメリットは、発電の際に発生した排熱を直接利用するため、火力発電や原子力発電と比べてもエネルギー利用効率が高い上に、自宅で発電するので送電ロスもほぼ0に近いことが挙げられる。また、一般的な家庭で使用する電気量の半分をまかなえるため、電気料金も安く抑えられ、さらには契約しているガス会社によっては、ガス料金も割引を受けられる場合もあり、家計にもやさしい。
とはいえ、デメリットもある。エコファームの最大のデメリットは「価格」だ。本体価格と工事費用に対しての補助金を受けることができるものの、これまでのエネファームでは、初期費用が1機あたり300万円前後と高額であったため、一般的な家庭ではおいそれと導入を検討できるようなものではなかった。
ところが今回発売されるエネファームの新製品はなんと、現行品よりも76万円も安い、200万円以内で買えるエネファームなのだ。本体価格は199万5000円(税込)。エネファーム補助金の金額は、本体価格から23万円を引いた額を2で除算するので、88万2500円の補助を受けられることになる。つまり、購入者の実質負担額は111万2500円。これなら、一般家庭でも将来的なことを考えると検討に値する金額だろう。
大幅な値下げに成功したのは、部品点数を約20%削減したり、エネファームのキモである、ガスから水素を取り出す改質器の材料を見直すなど、企業の技術力と努力の賜物だ。また、性能も大きく向上しており、燃料電池としての総合効率が現行品の90%から95%に大幅アップを遂げている。ちなみに、この値は世界トップの値だという。
さらに、現行品では一体になっていた「バックアップ熱源機」と「貯湯ユニット」を分離することで、設置スペースの奥行きを約150mmも縮小し、省スペース化にも成功している。おまけに、寿命も従来製品の20%増の6万時間に設定しており、一日8時間稼動させたとしても20年以上もの耐久性がある。
これまで、価格がネックとなってエネファームの購入を見合わせていたというような人には、今回の新製品は、導入への大きなきっかけとなるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)