2020年に爆発的ヒットとなった「鬼滅の刃」を追い風に、21年のアニメ市場も大型タイトルのヒットが続き好調だったようだ。一方で、日本アニメの世界市場は11年ぶりに減少に転じ、コロナ禍で視聴機会がテレビからネット配信へシフトしつつあるなど、アニメ業界は大きな構造変化の中にある。国内のテレビアニメ制作本数は減少傾向で、アニメ制作市場の規模も2年連続で減少、下請け専門スタジオを中心に赤字化する企業が4割まで増加と苦境に立たされており、新たな仕組作りが急務となっているようだ。
8月12日、帝国データバンクが「アニメ制作業界」動向調査(2022)の結果レポートを公表。これによれば、21年のアニメ制作業の売上高は2495億8200万円、前年比5.2%の減少と2年連続の縮小となった。制作企業の平均売上高は8億1800万円で、同様に2年連続の縮小で減少幅は拡大傾向だ。日本動画協会のデータでは20年のテレビアニメ制作本数は278本と300本を割り4年連続で減少となっている。一方で、Netflixなど定額動画配信サービスの利用が普及し配信市場は930億円と急拡大している。この関係で日本のアニメ制作会社が海外の動画プラットフォーマーや制作企業と取引するケースが増えており、日本の制作企業309社のうち海外企業との取引が判明した企業は70社、全体の2割超を占めた。中でもNetflix やアマゾンなど、米国を拠点とする動画プラットフォーマーとの直接契約・取引といったケースが急増、米国依存が強まっている模様だ。
下請「専門スタジオ」の21年の平均売上高は2億8700万円で前年から大幅に減少、赤字企業の割合は42.6%と4割を超えた。専門スタジオでは積極的な設備・人材投資が行われ受注能力の向上が図られてきたが、コロナ禍で制作見送りや中止などが発生し、元請からの発注量が減少、上昇傾向にあったコスト負担を吸収できずに赤字転落する企業が急増したようだ。自社コンテンツを持ちライセンス収入で収益を確保できる大手と自社コンテンツを持たない中小、専門スタジオで収益力の二極化が生じている。
海外、特に中国の制作企業の制作力は日本に比肩する実力をつけている。「人的・質的な制作能力を日本アニメ制作業界全体で維持できなければ、早ければ10年以内に日本アニメ自体が地盤沈下する」とレポートは指摘し、「アニメ制作会社のクオリティ維持や将来に向けた投資が可能とする、ヒット作の収益還元といった仕組みづくりが引き続き急がれる」と結論づけている。(編集担当:久保田雄城)