財団法人トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation/TMF)は、昨年12月から沖縄県において、矢崎総業、トヨタレンタリース沖縄、JTBとレンタカー利用者の安全運転支援のための実証実験を実施してきた。
その結果、事故多発地点での危険挙動の削減や速度の抑制など、交通事故削減につながるレンタカー利用者の行動変化を確認できたと中間発表した。その結果を受けて、今後はトヨタ自動車の車両データも「産学官」で活用し、さらなる安全運転促進と観光振興等地域課題の解決に取り組んでいくとしている。
TMFは昨年末、モビリティの安全運行を目指し、新たな取り組みをスタートさせた。着目したのは沖縄県や北海道などの観光地域におけるレンタカー利用時の事故件数の多さだ。両エリアの交通事故も全国同様に漸減・減少傾向にあるものの、レンタカーを運転中の事故の割合が他の地域よりも高いことが課題となっている事実に着目した。
そこでTMFは、レンタカー事業に関わる自動車、観光、航空などの各業界と連携して、事故削減に向けた取り組みを実施する実証実験を開始していた。
実証開始して9カ月を経て、矢崎総業の車載タブレット用アプリケーションの活用とインセンティブの供与などにより、レンタカー利用者の以下のような行動の変化が確認できたという。
危険度が高い沖縄県内8箇所の交差点において、接近時に警告を行ない、実証前と比較して速度超過46%、急発進49%、急加速78%、急減速50%の発生頻度の減少を確認したというのだ。また、安全運転度に合わせてキャラクターの表情が変化するアプリも好評で、ピーク速度減少などの効果につながったという。
今後、新たにトヨタ自動車も参画し、コネクティッドサービス「T-Connect」を活用したレンタカーの特性分析を行ない、事故が起こる可能性が高いと推定される箇所を抽出。沖縄県警にデータの検証・確認の協力で事故多発箇所も加えて矢崎総業の車載アプリに取り込み、レンタカーのドライバーに注意を促す事で、さらなる事故の未然防止を図る。
琉球大学・神谷大介准教授、および東京大学・福田大輔教授の協力のもと、これまで蓄積したレンタカー車両の行動データを各種観光施策の検討にも役立て、車中で新たに観光情報を提供することにより分散周遊を促し、渋滞解消を図って快適な観光地としての魅力向上につなげることも予定する。
全日空、日本航空および日本トランスオーシャン航空、ANA FESTA、JALUXエアポートは、安全運転者への特典(航空券・地域の産品等)の提供をすることで本実証に協力し、レンタカー利用者の安全運転支援に参画する。
交通事故防止には、ドライバーや歩行者に対する啓発活動、安全な「クルマ」の開発、道路整備など「交通環境」整備が三位一体となった取り組みが重要だ。TMFでは、啓発ツールの充実や関係機関と連携した「人」への啓発に加え、既存技術の組み合わせ、新たな技術視点の導入を推進していくとしている。(編集担当:吉田恒)