「業績なくして賃上げなし」。高所得層ほど賃上げ割合多く、二極化進む

2022年10月12日 06:41

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パーソル総研が「賃金に関する調査」。賃金が増加した者の割合は、正社員や年収が高い層ほど多く、二極化が進んでいる

 経済活動の正常化で再び人手不足感は高まり、人材確保の観点から積極的に賃上げを実施する企業も増えている。厚労省が8月に発表した2022年春闘の賃上げ率は2.20%で、コロナ禍前19年の2.18%を上回り4年ぶりの高水準となっている。しかし、業種や雇用形態別に見ると賃上げ状況にもバラツキがあり、正規社員や高収入業種での賃上げ割合は高くなっている一方で、非正規や平均収入の低い業種では賃金増加者の割合が低くなっており、全体として好調な賃上げ状況の中で格差、二極化が生じているようだ。

 9月5日、パーソル総合研究所が全国の18~69歳の就業者1万3745名を対象として5月下旬に実施した「賃金に関する調査」の結果レポートを公表している。前年と比べ賃金が「増加」と回答した者を雇用形態別に見ると、「正規の社員・職員」が44.6%で最も多く、「パート・アルバイト」は33.5%、「派遣社員」27.8%、「契約・嘱託社員」30.3%と、非正規雇用者に比べ正規雇用者のほうが賃金増加者の割合が多くなっている。

 業種別に「平均年収」と「賃金増加者の割合」の相関を見ると、平均年収が高い「情報通信業」では賃金増加者の割合が多くなっている一方、平均年収が低い「宿泊業、飲食サービス業」と「生活関連サービス業、娯楽業」では賃金増加者の割合も少なくなっており、平均年収と賃金増加者の割合には明確に正の相関が見られる。職種別でも平均年収の高い企画系の職種で賃金増加者の割合が多くなっており、年収の低い「飲食・宿泊サービス」、「配達・運搬・清掃・包装等」などでは賃金増加者の割合は少なくなっている。経済活動再開の中で、年収の高い層でより賃金が増加しており、所得格差、二極化が進展しているようだ。

 経営層530名に賃上げに対する考えや状況を聞いた結果では、「会社の成長なくして賃上げは難しい」と回答した経営層は63.0%と6割を超え、「賃上げなくして会社の成長は難しい」との回答はわずか6.4%となっている。一方で、「賃金アップは投資だ」と考える経営層は38.1%で「賃金アップはコスト増だ」18.5%より多くなっており、レポートでは「『賃上げには会社の成長が前提だが、成長への投資として賃上げも必要』と考える経営層の認識が読み取れる」としている。また「正規社員の雇用や賃上げを進める企業と、非正規社員の雇用や賃金抑制を進める企業とで、今後二極化していくことが示唆される」とも指摘している。(編集担当:久保田雄城)