コロナ禍で経済活動が本格的に再開されてから半年以上が経過する。夏には新型コロナ感染症の第7波があったもののマクロには大きな景気の減速はなく回復基調を維持している。経済活動の再開により再び人手不足が深刻化しており、9月には人手不足企業の割合は50%を超え、コロナ前の2019年11月と同水準となった。人手不足業種はコロナ前と同様に、IT関連や建設業、飲食店などであるが、旅行支援で重要喚起政策がスタートした旅館・ホテルなどの観光関連業種でも人手不足が深刻化し、十分事業を稼働させられない状況に陥っているようだ。
10月21日に帝国データバンクが「人手不足に対する企業の動向調査(2022年9月)」(調査期間:9月下旬、有効回答:1万1621社)の結果レポートを公表している。これによれば、正社員の人手不足企業の割合は50.1%と、コロナ前の19年11月と同水準になり、2年10カ月ぶりに5割を上回った。非正社員についても30.4%となり、コロナ禍で初めて3割を上回り、初の緊急事態宣言が発令された20年4月時点と比べ人手不足企業の割合は倍増している。
業種別では、正社員では「情報サービス」が71.3%で最多、DX需要が旺盛ななかIT人材の不足が深刻さを増している。次いで「人材派遣・紹介」が 65.0%で、特にIT関連の人材不足が深刻なようだ。また、コロナ前と同様に「メンテナンス・警備・検査」64.6%や「建設」64.4%が6割超で上位に来ている。これらに続き「旅館・ホテル」も62.5%と観光需要が徐々に回復するなか、人手不足が深刻化しているようだ。非正社員では、「飲食店」が77.3%でトップとなっており、次いで「旅館・ホテル」62.3%と観光関連業種での人手不足が目立つ。
20日に公表された帝国データバンク「全国旅行支援と水際対策緩和に関する企業の影響アンケート」では、全国旅行支援について、観光関連業種企業の73.0%が「自社にプラスの影響がある」と回答している一方で、「人手不足で思うように需要を取り込めない」、「人材がおらず旅行者の受け入れ対策に課題がある」など支援策により需要が増加しても人手不足のために事業を十分回せず需要を取り込めない現況について指摘している。レポートは「今後も継続的な支援による観光業界の回復が望まれるなかで、人手不足がボトルネックとなる懸念が生じている」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)