世界的なエネルギー・原材料価格の上昇の中、急速な円安に歯止めがかからず、輸入価格はさらに上昇し、企業利益を圧迫しているようだ。急速な円安を受け、値上げラッシュが続いているが、大企業と中小企業では価格転嫁能力にも差があり、2022年度の業績は、価格転嫁できる企業とできない企業で二極化が急速に拡大している模様だ。
3月19日、東京商工リサーチが2022年度の「業績見通しアンケート」(調査期間:10月上旬、有効回答:5505社)の結果レポートを公表している。これによれば、22年度の売上高では「増収見通し」が36.3%、「前年度並み」38.0%、「減収見通し」25.5%とバラついている。「増収」では大企業が44.8%、中小企業35.0%と両者で9.8ポイントの差が付いている。「減収見通し」では大企業が17.6%、中小企業26.8%と9.2ポイントの差で中小企業が上回っている。増収の理由を聞いた結果では、最多は「既存の製品・サービスの販売数量の増加」の68.5%、次いで「販売単価の引き上げ(値上げ)」の45.6%となっており、値上げによる売上額の増加が増収の要因になっている。「販売単価の引き上げ」は、大企業が54.2%に対して中小企業は43.9%と、10.3ポイントの開きがあり、価格転嫁の困難さで収益力に格差が生じていると推測できる。
経常利益の見通しは、「増益」が26.7%と3割に満たず、「前年度並み」は38.8%、「減益」は34.4%と3社に1社を超え、売上高見通しと比べ厳しい数字を見込む企業が多くなっている。規模別に「減益」割合を見ると、大企業が28.4%、中小企業は35.3%と、中小企業が6.9ポイント高く、価格転嫁が難しい中小企業で利益がより圧迫されているようだ。「減益」見込みの理由については、「原材料価格の高騰」が77.3%と約8割に達し最多となっている。次いで「原油(ガソリン等製品含む)価格の高騰」が51.5%、「電気料金の高騰」49.3%と続いており、世界的なエネルギー・原材料価格高騰の中で円安による輸入価格高騰が利益を圧迫し、価格転嫁が困難な中小企業でより減益傾向を強めていると推測される。これに次いで、「人件費の引き上げ」も45.8%と、人手不足や最低賃金の上昇なども影響し、コストアップで利益圧迫要因となっているようだ。
レポートは「企業倒産が4月から6カ月連続で増加するなか、『値上げ』や価格転嫁への取り組みが遅れた企業の息切れが本格化することも危惧される」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)