2015年に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されたことにより、現在、それらの課題解決に向け、国境を越えた企業の積極的な取り組みが期待されている。SDGsといえば、とかく環境面での課題がクローズアップされがちだが、17ある目標の内、10以上の目標が人権に関係するものであることを忘れてはならない。
企業のCSR活動においても、人権課題は重要なテーマだ。資源の多くを海外の輸入に頼る日本にとって、どんな企業にとっても無関係ではない。サプライチェーンには、解決されるべき様々な人権課題が潜んでいる。とくに発展途上国においては、子どもたちが充分な教育を受けられず、労働に駆り出されている現実も多い。
例えば、チョコレートなどの原料として日本が輸入しているカカオの約80%を生産しているガーナでは、100万人を超える子どもたちがカカオ生産に従事しているといわれている。これに対し、菓子大手の森永製菓は2008年から毎年「1チョコ for 1スマイル」というキャンペーン活動を続けている。これは、同社の対象商品1個につき1円をガーナなどに寄付し、子どもたちが教育を受けられるように支援するもので、2021年度のキャンペーン期間では約2150万円もの支援金の調達に成功している。
また、カンボジアで積極的な教育支援活動を行っているのは、養蜂業大手の山田養蜂場だ。同社も2008年から、認定NPO法人 JHP・学校をつくる会とともにカンボジアにおいて学校づくりを行っている。カンボジアは400年以上も前から日本と交流のある国だが、貧困問題や今でも多くの地雷・不発弾が残るなど、長い間の内戦の影響が色濃く残っている。そんなカンボジアの窮状を知った、同社の山田英生社長は荒廃した国家を立て直していくには人の教育が何より大切だと考え、これまでに12の学校を寄贈。そして今年は13校目となる「山田養蜂場ミツバチ第13中学校」をカンボジアのタナック中学校に寄贈した。また、2013年に同社が寄贈したポートム中学校も、新型コロナウイルスの流行で、生徒と教員の安全確保のために手洗い場の設置が必要とされていたため、JHPを通じて追加支援を行い、手洗い場を寄贈している。作って終わりではなく、その後のケアも手厚く行っていることは、他の企業も見習うべきところだろう。
少子高齢化社会に突入した日本にとって、自国の子どもたちは未来の日本を支える大切な宝だ。でも、それと同じく、世界の国々の子どもたちも我々人類の宝なのだ。持続可能な社会のために、子どもたちの明るい未来のために、企業はもちろん個人でも、まだまだできることがあるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)