新型コロナウイルス感染症の流行で日本のDXの遅れが強く意識され、日本のDX投資も一斉に動き出した。ITコンサルタントのITRの調査報告書によれば、2022年度のDXを意識したIT投資は中堅企業を中心に大きく伸びているようだ。また、「ワークスタイルの変革」と「業務の自動化」を中心にDX投資が成果を上げているとする企業の割合が微増ではあるものの増加傾向であり、同報告書は「DXへの取り組みは、ようやく成果獲得に向けて実践フェーズに入るところ」であると評価している。
11月16日、ITRが「国内IT投資動向調査報告書2023」(調査期間:22年8?9月、有効回答:2172社)の一部を公表している。これによれば、22年度のIT予算額が前年度から「増額」したとする企業の割合は前年調査から6ポイント増加し41%となり、01年の調査開始以来最高となった。売上規模別に見ると、「増額」した企業の割合は「500億~1,000億円未満」で過半数を占めており、中堅企業での増額が顕著となっている。23年度についても「22度とほぼ同水準のIT投資意欲が維持される」と報告書は見込んでおり、「コロナ禍によるビジネス環境の変化とDXに対する意欲の高まりがIT投資の増額を後押ししていると推察」している。「DX関連予算の計上の有無」について聞いた結果では、「計上している」との回答は49%と半数を占めた。
進展状況について聞いた結果では、成果が出ている企業の割合が前年度調査に比べ微増しており、特に「ワークスタイルの変革」と「業務の自動化」については「成果が出ている」と回答した企業は2割を超え、報告書は「DXへの取り組みは、ようやく成果獲得に向けて実践フェーズ」に入ったと評価している。23年度の新規導入可能性については、「電子契約・契約管理」がトップとなっているほか「AI・機械学習プラットフォーム」「5G(パブリック)」「IoT」が上位にきており、今後は「ビデオ会議・Web会議」などの在宅勤務対応のIT投資は落ち着く一方で、デジタルビジネスと関連性の高い製品・サービスへシフトして行くと報告書は見込んでいる。
ITRのプリンシパル・アナリスト三浦竜樹氏は「DX推進に向けてデジタル人材の育成に着手する動きも見られるなど、DXへの取り組みは戦略策定フェーズから実践フェーズに移り始めている」、今後は「DXの成果獲得に向けたIT投資計画を策定することが求められる」とコメントしている。(編集担当:久保田雄城)