個人企業のインボイス制度への登録が進んでいないようだ。インボイス制度で取引先が仕入税額控除を受けるためには適格請求書発行事業者の登録が必要となる。その登録申請の期限は2023年3月31日で、既に期限まで4カ月を切ったが、個人企業の登録率は11月末の時点で2割にも満たない。背景には免税業者の多い個人企業での負担増が予想され、制度自体に対する強い反発がある。インボイス制度については、与党内からも見直しを求める議論が出ている上に、野党、自治体、業界団体などからは導入延期を求める声もあがっており、制度の実施自体が不透明、不安定な状況になってきた。こうした状況で様子見をしている個人企業も少なくないと見られ、登録の遅れが制度全体の実施にも大きく影響を与えそうな状況となっている。
12月12日、東京商工リサーチがインボイス制度の登録状況についてのレポートを公表している。これは、国税庁の適格請求書発行事業者サイトの公表データと総務省の「経済センサス」の企業数を基に11月末の登録率を算出したものだ。国税庁のデータによれば、11月末のインボイス登録事業者の数は172万3746件となっている。法人・個人別に登録率を見ると、総務省「平成28年経済センサス」の法人数は187万7438件に対し、法人の登録数は134万6079で、登録率は71.6%となり7割超を占めている。一方、個人企業数は197万9,019件に対し、登録数は37万7667件で、登録率は19.0%と2割にも満たない。
国税庁のデータでは20年の課税事業者数は、法人が約205万件、個人企業は約110万件で、課税事業者すべてが登録すると仮定した場合、法人も個人企業も残り約70万件となる。個人企業の月次登録の最多は11月の8万874件であり、このペースでは期限の23年3月までには間に合わず、残り70万件が4カ月で登録完了になるためには、単純計算で1カ月に17万5000件の登録が必要となる。
各方面からの反発を受けて政府や与党は免税事業者が課税事業者を選択した場合の軽減措置などを講じる方針を示している。しかし、インボイス制度に対しては様々な問題点が浮かび上がってきており、「軽減策が登録数の大幅増につながるかは未知数だ」とレポートは指摘している。23年10月の制度開始を控え、企業はシステムの改修や免税事業者との取引方針の決定など様々な準備作業に追われている。登録の遅れは制度全体に大きなマイナス影響を与える。政府の適切な対応が望まれる。(編集担当:久保田雄城)