ロシアによるウクライナ侵略が後押しするような結果にもなっている『リアリズムな防衛力強化』は「専守防衛・防衛力・抑止力強化」の名の下で憲法遵守精神を吹っ飛ばした怖さを漂わせている。岸田内閣に外交努力による平和維持へのバランス感覚が崩れているのではないか。政府には冷静な見識が求められている。
自衛隊が米軍指揮下に入ることも、米軍が自衛隊指揮下に入ることも、独立国として、そこまでの愚かさはないだろうが。岸田内閣で米軍と自衛隊の距離が安倍内閣以上に限りなく「一体化」に近づきつつある。米軍との線引きがどうなっているのか、どうなっていくのか、政府にはことに及んだ場合の役割を国民に説明していくことが必要だ。
あわせて、防衛力強化の名の下で「国内軍需産業」の育成路線が顕著になった。日本が「憲法9条(戦争の放棄規定)を有する平和国家」から「普通の国」に転落する危険を感じるのだが、岸田総理はこうした懸念をどう払しょくしてくれるのだろうか。「国際法」と「憲法」の範囲内で取組むと強調する総理だが、その言葉はただの音としてしか耳に入ってこない。
10日には防衛産業支援法案を閣議決定した。軍需企業が海外への防衛装備品という名の兵器を輸出するのを支援する基金を新設するほか、製造工程の効率化を図った企業を支援する。兵器に関する秘密漏えいに1年以内の拘禁刑か50万円以下の刑事罰も設ける。
気になるのはネット上に賛成の書き込みが目立つことだ。「防衛産業ではなく、兵器産業と銘打って海外に輸出できる産業構造にすべき」「非核3原則改定も入れるべき」「日本製兵器を外国に使ってもらうというのは日本の同盟国をつくることと同義になるので進めていくべき」と賛同する声が目立つ。一方で「第2次世界大戦の日本を彷彿させる」と懸念する声もあるにはあるのだが。
加えて国会審議を経ず閣議決定で歴代政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の一部行使を容認するよう強行した安倍内閣を見習ってか、以降の政府は重要案件を次々、閣議決定するやり方を繰り返す。
「なんでもかんでも国民の民意も無視し閣議決定するなら、国会なんか要らないんじゃない?国会議員が多くいても、何も議論されずに閣議決定で決まるなら、独裁政治と同じこと」「国会で審議もせず、閣議決定、やりたい放題ですな」。原発政策の方針転換もその典型といえよう。
このままで大丈夫なのか。国会や防衛の専門家、日本学術会議、研究機関などにおいて、憲法9条と岸田内閣の安全保障政策、防衛政策の整合性を冷静に点検検証、徹底議論されることを期待する。政府、国会議員には歯止めなき軍拡路線に陥らないための高い見識を持って防衛の在り方を再検証頂きたい。(編集担当:森高龍二)