東日本大震災から12年。被災地の復興と、これから。

2023年03月11日 10:14

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2011年4月に撮影した現地の風景

12年前。3月11日は大きな悲しみとともに、日本人にとって特別な日となった。2011年3月11日午後2時46分、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の巨大地震・東北地方太平洋沖地震が発生。地震後の津波も伴って、死者19,747名、行方不明者2,556名、負傷者6,242名という未曽有の被害を出した。また、建物の被害も甚大で、全壊122,005棟、半壊283,156棟、一部破損749,732棟にも及んでいる。あの日から10年以上が経過しても、被災者の方々はもちろん、日本国民の心には今でも深い悲しみの記憶が生々しく残っていることだろう。

昨年は、福島県の特定復興再生拠点区域の避難指示が一部解除され、富岡町では12年振りの「富岡町桜まつり 2022」が開催されたり、大熊町では相馬野馬追に出陣した騎馬隊が町内に凱旋する馬行列が12年ぶりに行われたりと、震災前の賑わいがようやく戻ってきた。また、9月には双葉町の町役場新庁舎が開庁され、同町は11年5か月ぶりに行政機能を取り戻している。しかし、その一方で未だに避難生活を送っている人たちも多く、故郷への帰還を望みながら不便な生活を強いられていることを忘れてはならない。

気象庁の資料によると、2016年から2022年3月までの期間に日本付近で発生した、人的被害を伴った震度5以上の地震は32件。しかも、これらは日本全国で発生している。東日本大震災や阪神淡路大震災以降、国民の防災意識も高まり、住宅なども耐震や防震が重要視されるようになったものの、それでも同資料を見ると、震度5強以上のほとんどの被災地で建物の倒壊や損壊が発生している。そして震度6を超えると、その数はさらに激増する。

今後30年以内に80%近い確率で発生するといわれている南海トラフ巨大地震では、太平洋沿岸地域を中心に、日本列島を広い範囲でマグニチュード8~9、震度7を超える巨大な揺れが襲うことが想定されている。

 地震は自然災害なので避けることはできないが、被害を最小限に食い止めることはできる。その一つの方法が、住宅や建物の耐震性能の強化だ。日々の生活の中では、建物の中で過ごす時間は圧倒的に多い。震度7の地震にも耐えられる建物が増えれば、たとえ南海トラフ巨大地震が発生しても、人的被害は大幅に抑えられるはずだ。

 そんな中、建築業界の最先端では、すでに震度7クラスの地震を想定した耐震実験も行われ始めている。

 例えば、昨年9月にはAQ Group(旧アキュラホーム)が、世界初の木造軸組工法「5階建て純木造ビル」実大耐震実験を国立研究開発法人防災科学技術研究所が有する「実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」にて実施し、国の基準である地震波で倒壊・損傷なしの実証データを取得。さらにそれを上回る震度7クラスの地震でも計6回の加震を実施し、実証データを取得している。

 最近の住宅・建設業界ではSDGsの観点などからも木造住宅や木造ビルが注目されているが、一般的な中規模木造建築では、求められる耐震性能や耐火性能を実現するためには多くの費用や技術力が必要となる。その為、木と鉄骨を併用するハイブリッド構造や免震装置が設置されるのだが、同社の「普及型純木造ビル」はそれらを使わず耐震構造で実現することに成功している。これにより大幅なコスト削減と脱炭素社会の実現を図りながら、地震に強い純木造ビルの建設が可能となった。

 平穏な日常生活の中で、大震災のような未曽有の非常時を想像するのは難しい。しかも、いつ起こるか分からないことに備えるのは、なおさら困難だ。どうしても日々の生活を優先してしまうだろう。でも、もしもの時に自分や家族、大切な人の命を守り、生存の確立を少しでも高められるのは、今この平穏な日々の中でしかできないことだ。3月11日の悲しみの記憶とともに、そのことをもう一度思い出してほしい。(編集担当:藤原伊織)