「政治的公平」を巡る放送法第4条解釈が2015年当時の安倍内閣の下で総務大臣に就いていた高市早苗経済安全保障担当大臣の国会答弁で「一つの番組でも極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」などとしたことが、現在も「たった一つの放送番組だけで『放送法違反が認定でき、テレビ局の電波を止めることができる』という言論弾圧につながりかねない危険をはらんだままに至っている。これを解消させなければならないことが今回の「行政文書問題」で浮き彫りになった。
放送法第4条の解釈について、時の政権によって歪められた解釈は政府がいうところの「補足説明」が行われる以前の解釈に戻すか、より言論・報道の自由が担保される在り方にすることが求められている。
松本剛明総務大臣が「行政文書」と認定した資料には2015年当時、安倍晋三総理と高市早苗総務大臣が「政治的公平に関する件で電話」し、安倍総理が「今までの放送法の解釈がおかしい」と語り、サンデーモーニングなどの番組名をあげたことを示すメモ(平成27年3月9日(月)夕刻のメモ「高市大臣と総理の電話会談の結果」について「大臣室・平川参事官から安藤局長に対して」とあるもの)からも「解釈変更した」ことが明らかにうかがえる。
当時、磯﨑陽輔総理補佐官は総理の意向を汲んで、新しい解釈をするよう威圧的に求めていたことがうかがえる内容がメモから浮かび上がっている。
しかし高市経済安全保障担当大臣は、この行政文書は「捏造」と言い放ち、松本総務大臣が「行政文書だ」と認めた後も、自身の関わる4ページは「捏造だ」と主張を続けている。
今回の問題を明るみにした立憲民主党の小西洋之参院議員は「当時の礒崎総理大臣補佐官が主導し、『安倍総理大臣がゴーサインを出すならやる』と言ったのが、当時の高市総務大臣だ」と指摘し、「当時、磯﨑氏と高市大臣は官僚を通じて意思疎通を確保しながら、違法な解釈の作成等を行っている」としている。
また、公表された資料について小西議員が指摘するように「そもそも、総務省のエース官僚らが作成し、最高幹部で共有(使用)されていた行政文書の正確性を総務大臣が精査するというのがおかしい」と資料が一級の正確性を有するもので、これを精査するなどは「高市大臣の辞職を防ぐための『精査』でしかなく、国会審議の妨害」と強く非難している。
放送法4条の解釈に関しては、政府による今回の恣意的な解釈がなされる前までは「一つ一つの番組でなく、放送事業者の番組全体を見て判断する」というものだった。
磯崎総理補佐官はツイッターで「法律論ですから分かりにくいかも知れませんが、政府は、昭和の時代から、政治的公平性は極端な場合を除き、『番組全体』を見て判断するという解釈を示しているのです。しかし、極端な場合は、そうでない場合もあるということです。これは定着した解釈であり、変えようはありません」と8日発信した。
しかし、小西氏は、この発信に対して9日ツイッターで「私は放送法解釈を担当する放送政策課長補佐でしたが、そんな『定着』した解釈は見たことも聞いたこともありません。礒崎氏は当時『国家安全保障と選挙制度』のみを担当する総理補佐官であり、放送行政に介入したのは内閣法違反です。礒崎氏は予算委の証人喚問に応じるべき」と強く反論した。
いずれにしても、高市氏の総務大臣当時の国会答弁の撤回と補足説明とする部分の撤回を行うことが健全な民主主義の育成には必要だ。
加えて、高市大臣が「捏造」を主張するなら「捏造」とする根拠を自らが明らかにするべき。日本共産党の小池晃書記局長は、立証責任を小西氏に求める高市氏に対し「なんで政府の行政文書を野党が立証しなければならない。許されない開き直りだ」と記者会見で指摘した。
ネット上でも「行政文書はあったやりとりをありのまま、できる限り正確に記してあるのが大前提。『不正確』と言うのであれば、どう不正確なのか、論拠を持って証明しなければならないのは高市氏側だ」
「『正確性に疑義がある』と当時の総務省の最高責任者である高市大臣が今になっておっしゃるのはいかがなものか。行政文書には当時は目を通していなかったのか。不思議でならないし、当時『電波を止める』と物騒な発言をされていたことを記憶しています」など高市氏への批判の声が多い。(編集担当:森高龍二)