春は巣立ちの季節 今一度見直したい、「巣立ち後」の夫婦生活

2023年04月16日 10:24

巣立ち

進学や就職で新生活が始まるこの時期、「子どもの巣立ち後の暮らしに関する調査(2023年)」が積水ハウスから発表された

 長かったコロナ禍もようやく収束に向かいつつある中、2023年度が始まった。学生たちは卒業し、進学や就職など新しい門出を迎える「巣立ちの季節」。住み慣れた実家を離れ、子どもたちが一人暮らしを始める一方、残された両親にも新しい生活が訪れる。結婚してから数十年が経ち、お互いのことを理解しあえているつもりでいたけれど、いざ二人きりの生活になると、パートナーの意外な一面を知ったり、すれ違いを感じたりすることもあるようだ。

 そんな子どもたちの巣立ち後の夫婦生活について、住宅メーカー大手の積水ハウスの研究機関「積水ハウス 住生活研究所」から非常に興味深い調査データが公表されている。住生活研究所は、今後迎える「人生100年時代」には、暮らしにおける「幸せ」のさらなる追求が重要との考えから、2018年に同社が「住めば住むほど幸せ住まい」をテーマに開所した、日本企業初の“幸せ”について研究する機関だ。日々変化し続けるライフスタイルについてさまざまな角度からリサーチし、それを同社の時間軸を意識した住まいづくりに役立てるとともに、ユーザーの幸せのヒントになる発信を積極的に行っている。

 今回の調査では、子どもが巣立った40〜60代の既婚男女を対象に、「子どもの巣立ち後の暮らしに関する調査」を実施。そのリサーチ結果を見ると、巣立ち後の夫婦生活の満足度において、男女の心情の違いが顕著に表れているのが興味深い。

 例えば、子どもが巣立った時の心情として、女性の最も多い回答は「自分の時間が持てる/増える」の 49.8%で、男性との差は+20.2ポイントと大きな開きがある。続いて女性の回答で44.8%を占める「寂しい」は、男性との差が+15.6 ポイントとなっている。一方、男性の最も多い回答は「子育ての達成感・安心」が35.4%で、こちらは女性よりも3.6ポイント多く、続く「夫婦の時間が持てる/増える」が 30.3%となっているが、女性との差は+12.6ポイントと大きく開いている。子どもたちが家庭から巣立っていったことによって、夫婦の時間が持てると喜んでいるのは男性の方がはるかに多いというのは、男性にとってなかなかシビアな結果だ。

 また、「自分の自由な時間」が増えた理由について、男女いずれも「子どもにかける時間がなくなった」と最も多く回答しているものの、その内容には男女間で大きな違いがある。男性は「子どもにかける時間がなくなった」に回答が集中しているのに対し、女性の60.4%が「家事量が減った」と回答しているのだ。夫婦の家事分担も浸透してきてはいるものの、実質的にはまだまだ妻の負担が多いことの表れなのかもしれない。

 住生活研究所では、これらの調査結果を踏まえ、子どもたちの巣立ち後の夫婦生活をより幸せで豊かに過ごすための4つの「幸せTips」を紹介している。

 まずは「家事分担のための収納」についてだ。夫婦で家事を分担するために、道具の収納場所を共有し、一覧性のある収納場所を確保した上で、マイ家事道具や担当エリアを再分配するなど、自分事化することで、家事に取り組みやすくなるという。2つめは、夫婦が一緒に過ごす時間を増やすため「一緒をつくるおやつ時間」を持つことだ。とっておきのお菓子や飲み物をテラスやバルコニーで一緒に楽しむことで、会話も弾むのではないだろうか。そして3つめは、「子ども部屋活用」だ。空いた子ども部屋に趣味の道具や材料、作品などを収納するスペースを作り、有効活用する。そして最後の「幸せTips」は、「旅行の思い出を飾る」だ。自宅でお土産物を飾る思い出コーナーを作ることが有効だという。それをするためには、二人で多くの旅行をして、より多くの同じ時間を過ごす必要がある。子ども中心の生活が、少しずつ二人の時間に変わっていく、良いきっかけになるのではないだろうか。

 厚生労働省の調べによると、全体の離婚率が徐々に減少傾向にある中、熟年離婚だけは大幅に増加傾向にある。1980年の熟年離婚件数が約1万1千件なのに対し、2019年では約4万件まで増加しているのだ。離婚の原因は様々で、一概に離婚が悪いとも言い切れないが、子どもたちの巣立ち後の夫婦の過ごし方やコミュニケーションの取り方によっては、違う結末や幸せもあるのかも知れない。(編集担当:今井慎太郎)