処理水問題で韓国専門家視察団を受入れ 総理

2023年05月09日 06:30

 岸田文雄総理は7日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との会談後の共同記者会見で、韓国など近隣諸国が懸念している東京電力福島第一原発でたまり続けている放射能汚染水ALPS処理水の海洋放出問題について、韓国内に懸念の声があることは認識しているとし「今月、東電福島第一原発への韓国専門家現地視察団の派遣をお受けすることにした」と発表した。

 岸田総理は「日本はIAEA(国際原子力機関)のレビューを受けつつ、高い透明性をもって科学的根拠に基づく誠実な説明を行っていく考えです」と述べたうえで「韓国国内で引き続き懸念の声があることは良く認識しています。韓国の方々に理解を深めていただくため、今月、東電福島第一原発への韓国専門家現地視察団の派遣をお受けすることといたしました。日本の総理として、自国民及び韓国国民の健康や海洋環境に悪影響を与えるような形での放出を認めることはないことを申し上げたい」と安全性を担保していくことを改めて述べた。

 また歴史問題に関しても「3月に尹大統領が訪日された際、私は1998年10月に発表された『日韓共同宣言』を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいると明確に申し上げました。この政府の立場は今後も揺るぎません」と述べた。

 そのうえで「尹大統領の御決断により3月6日に発表された措置に関する韓国政府による取組みが進む中、多くの方々が過去のつらい記憶を忘れずとも、未来のために心を開いてくださったことに胸を打たれました。私自身、当時、厳しい環境のもとで多数の方々が大変苦しい、そして悲しい思いをされたことに心が痛む思いです。日韓間には様々な歴史や経緯がありますが、困難な時期を乗り越えてきた先人たちの努力を引き継ぎ、未来に向けて尹大統領を始め、韓国側と協力していくことが、日本の総理としての私の責務であると考えております」と明言した。

 岸田総理は共同記者会見の冒頭あいさつの結びに「我々のシャトル外交は続きます。2週間後には広島で尹大統領をお迎えいたします。本日はG7広島サミットでも議題となる国際社会の諸課題での緊密な協力を確認いたしました。さらに、被爆地広島において、平和記念公園を訪問し、韓国人原爆犠牲者慰霊碑にも一緒に祈りを捧げることで尹大統領と一致いたしました」と紹介。

 そして「本日の会談では3月に大きな一歩を踏み出した日韓関係改善の動きが軌道に乗ったことを確認しました。次は広島で、その後は国際会議の場も含め、尹大統領と頻繁にお会いして信頼関係を深めながら、日韓関係強化の機運を確かなものにしていきたいと考えております」と語った。(編集担当:森高龍二)