永岡桂子文部科学大臣は8日の記者会見で日本大学のアメリカンフットボール部員が覚せい剤と大麻所持容疑で5日に逮捕された事件について「大変遺憾」と断じた。
永岡大臣は「大学は警察捜査への全面協力と、明らかになった事実に対し説明責任を果たすとともに、不祥事防止に取組んでほしい」と要請した。
日本大学はこの事件で8日に記者会見。この中で2022年11月には「(22年)7月に大麻のようなものを吸った」とフットボール部の学生から自主申告のあったことを明らかにした。
しかし、この学生と今回逮捕された学生が同一人物かどうかについて、澤田康広副学長(元東京地検総務部副部長)は「捜査に関わるので言えない」と明らかにできないとした。大麻を吸った学生が複数いる可能性も否定できず、今後の捜査の行方が注視される。
林真理子理事長は「覚せい剤取締法及び大麻取締法違反容疑により警察による家宅捜索を受け、学生1人が逮捕されたことは大変遺憾であり、理事長として深く受け止めるとともに、本学学生、卒業生、保護者、関係者の方々に多大なご迷惑と心配をかけたこと、またこの問題の説明に時間を要したことを心からお詫びする」と陳謝した。そのうえで「大学あげて今回の問題に取組み、再発防止に全力を尽くす」と強調した。
大学によると、7月6日、11人に対し持ち物検査を、3人からヒアリングを行った。7日~27日までの間には寮生23人にヒアリング、16人から持ち物検査、10人の元寮生にもヒアリングを行ったという。
酒井健夫学長は「7月6日の持ち物検査で茶葉のようなものがわずかに付着した小さなビニール袋と内容不明の容器(缶)の不審物を発見した。その後、18日に警察に相談した。相談までに12日間経過しているが不審物を発見した時点では『違法な薬物との確証がなく』ヒアリングを進めてからまとめて警察に相談しようとした」などと釈明。本来、不審物が見つかった時点で届けるべきものが、確証がないため12日後になったという不可解な説明を行った。
酒井学長は今回の事件以前の昨年10月にフットボール部の保護者会開催後に学生寮内で大麻使用をしていないか調査するように保護者から依頼を受けたと明かした。
そのうえで、当時、部員121人に対し10月30日~11月6日に聞き取り調査を実施したが大麻使用の事実は確認できなかったとした。
しかし、11月下旬になってフットボール部員1人が「大麻と思われるものを7月頃に吸った」と自己申告。警察に相談したものの、吸ってから4か月経過し、物的証拠がないことから立証困難となったという。
自己申告した学生に対しては十分指導するよう警察関係者から指導があり、厳重注意したと説明。
酒井学長は「現在も5日の学生の逮捕を受け、フットボール部の活動を『無期限活動停止』とし、部の監督、指導者、退部者を含めた部員全員から聞き取り調査を実施中で、警察の捜査にも全面的に協力していく。また、薬物使用の有害性、反社会性は明らか。今回の調査でさらに法に反する不適切な事実があった場合には警察と密に連携し、厳正に対処する」と述べた。
澤田副学長は警察に届けなかった12日間の空白理由について「発見されたものが大麻であれば自首させたいと考えた」と説明。
澤田副学長は「7月6日は当人にヒアリングしたが、自首できる状況ではないと判断し、発見したものをすぐには警察に渡さず、大学本部に持ち帰り、私の責任の下で保管。翌日に学長にも報告した」と説明。
その日から1日に2~3人を対象にヒアリングしていたが「18日に保護者からの手紙(情報)もあり、その時点で警察に報告することとした」と釈明した。
林理事長は、こうした一連の大学側の対応は「適切であったと考えている」と記者団に答えた。ただ警視庁へ報告までの空白の12日間。部員に聞き取り調査していたためとしているものの、尿検査で薬物反応は2週間程度過ぎると出なくなると言われており、ヒアリングで遅れたとする理由を疑う声もある。大麻、覚せい剤使用が逮捕された学生のみだったのか、他にもあったのか、今後の捜査が注視される。(編集担当:森高龍二)