【コラム】福島の鉄くず売却問題 環境省自ら実態調査を

2023年09月24日 09:45

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東京電力福島第一原発事故により放射性物質に汚染されている可能性がある鉄くず、銅線など「帰還困難区域」にある福島県大熊町立図書館・民俗伝承館の解体工事で生じた金属類を複数の作業員が無断で持ち去り、売却していた、というとんでもない事件が報道された

 東京電力福島第一原発事故により放射性物質に汚染されている可能性がある鉄くず、銅線など「帰還困難区域」にある福島県大熊町立図書館・民俗伝承館の解体工事で生じた金属類を複数の作業員が無断で持ち去り、売却していた、というとんでもない事件が報道された。

 毎日新聞やNHKなどが報じた。環境省はもちろん、裏が取れれば放射性物質汚染対処特措法違反、窃盗事件として安全性の視点から厳しく対処すべき。また環境省は再発防止と適切管理徹底のために自ら調査に乗り出すべき。合わせて他の業者に同様の問題が発生していないかも含めた調査を行うことが必要だ。

 報道によると複数の作業員が帰還困難区域外の県内業者に放射能濃度の検査をしていない金属類を売却した。少なくともこうした行為が7回繰り返され、約90万円得ていたという。

 本来、帰還困難区域の解体工事で生じる金属類などの廃棄物は指定仮置き場に置き、安全性を確保するため放射線量を測定。測定値で1キロ当たり10万ベクレル超では大熊町や双葉町の「中間貯蔵施設」で保管。10万ベクレル以下の場合は専用処分場。100ベクレル以下で基準を満たせば再利用に道がある。

 つまり、基準値以上であれば専用施設で保管しなければならない。今回そうした検査をしないまま、汚染された可能性のある金属類が業者に売却される事態を招いた。一次下請けの会社社長はもちろんだが、元請けの鹿島、発注者の環境省含め管理責任が厳しく問われよう。

 今回の工事は鹿島・東急の共同企業体が除染工事と合わせ51億円で落札。毎日新聞の報道によると一次下請けの地元事業者社長は作業員への聞き取りで持ち出しが確認できたため、「元請けに全部文書で報告した」としている。鹿島は「発注者、警察に相談の上、対応中」とか。しかし、この案件に関して同社HPでは9月22日現在、コメントが見当たらない。

 土屋品子復興大臣は今回の事案に「本当に大変なショック。現場の人は本当に大熊町の皆さんと寄り添って仕事をしてもらいたいし、そういうふうに頑張っていると思っていた。環境省とも話をし、二度と起こらないように伝えたい」と語った。

 伊藤信太郎環境大臣は「このような事案が発生したことは誠に遺憾だ」としながらも「環境省としては受注者において適切に工事や仮置場の管理をするよう引き続き指導・監督していきたい」。再度の記者団の問いにも「受注者が適切に管理するように、環境省としても強く指導・監督していく」と直接に実態調査に踏み込む姿勢が少しも見えない。

 放射性物質に汚染されている可能性がある鉄くずが検査なしに業者に売却された事案であるにも関わらず、伊東大臣の認識は甘すぎるのではないか。こうした問題の再発を徹底しなければ、鉄くず業者が自ら検査機器を備えて対応しなければならない事態にもなりかねない。受注者への指導・監督をすると他人任せでは環境大臣の適格性が問われることになろう。実態調査に取組むべきだ。(編集担当:森高龍二)