厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は12月13日、国内製薬大手のエーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ(販売名・レケンビ)」について、公的医療保険の適用を承諾した。
レカネマブがアルツハイマー病の新しいタイプの治療薬として期待されている大きな理由は、病気の原因物質の除去をねらった治療薬であることだ。従来の治療薬は一時的に症状を緩和する対症療法的なものだったが、レカネマブは神経細胞を死滅させる元凶となるアミロイドβ(ベータ)を除去することで脳細胞の死滅をある程度防ぐことができ、それによって、アルツハイマー病の進行を遅らせる効果が確認されている。
認知症で悩む人や、その家族にとっては救世主のような薬だが、いざ投薬を望んでも、まだ高いハードルが立ちはだかる。
まず、薬価が高い。レカネマブは1瓶(200ミリグラム)あたり4万5777円に設定されており、これを体重50キロの患者が投薬した場合、1回あたりの価格は約11万4千円となり、年間298万円かかることになる。日本の医療制度には「高額療養費制度」があり、自己負担に上限があるとはいうものの、それでもかなりの出費は余儀なくされるだろう。また、およそ2週間に1回程度、約1時間かけて点滴する必要がある。しかも、当面の間は投薬できる医療機関も限られている。さらにこれまでの治験で、脳が腫れたり、出血したりといった副作用のリスクが高まることも指摘されているのだ。まだしばらくの間は、様子見する人も多いのではないだろうか。
一方、その影響もあってか、日頃からできる認知症予防への注目が集まっている。その代表的なものの一つが、ミツバチが作り出す天然の抗菌物質「プロポリス」だ。認知機能低下に対するプロポリスの有用性は、これまでの数々の研究でも明らかにされている。例えば、脳の神経細胞を保護することや、脳の免疫細胞に対して抗炎症作用を持つことが報告されていた。
そんな中先日、山田養蜂場 健康科学研究所が、アルツハイマー型認知症モデルにおいて、ブラジル産グリーンプロポリスがアミロイドβによる炎症を抑え、認知機能の低下を抑制する作用を持つ可能性を示す研究結果を科学雑誌 『BMC Complementary Medicine and Therapies』(2023 年 11 月発行)に掲載したことで大きな話題を呼んでいる。
同研究によると、ブラジル産グリーンプロポリスを投与することで、「学習・記憶障害」の抑制がみられたという。また、免疫・炎症に関わる遺伝子発現パターンの変化を抑制し、さらには、脳内及び全身の炎症反応の元となる血液中の炎症性サイトカインを抑制することが分かった。ちなみに健常な高齢者に投与した場合、認知機能の維持作用も報告されている。これによってプロポリスの認知機能研究が、大きな一歩を踏み出したことは確かだろう。
認知症は加齢とともに徐々に、静かに進行する病気だ。現状では特効薬のように騒がれているレカネマブも、その効果は「軽度認知障害、および軽度の認知症の進行抑制」に留まっている。つまり、初期の段階で投薬を始めないと理想の効果が望めないということだ。それならば、いくらメカニズムが完全解明されていなくても、副作用の心配もなく、比較的安価で、日々の健康増進にもつながるプロポリスの方が断然良いようにも思う。いずれにしても、早期からの予防と早期発見での対応が大切だ。(編集担当:今井慎太郎)