2025年に開催を控えた「大阪・関西万博」。海外パビリオンの建設の遅れや、今回の目玉の一つであった「空飛ぶクルマ」の商用運航の断念、前売り券の売れ行きを心配する声など、何かとネガティブな話題ばかりが取り沙汰されているが、万博は日本の魅力を世界中の人々に発信できる、またとない機会だ。開催地である大阪府・大阪市を中心に国や自治体、万博協会などが国内外に向けて様々な機運醸成の取り組みを進めている。
そんな中、兵庫県が展開している「ひょうごフィールドパビリオン」注目をしてみた。
兵庫県は、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という歴史も風土も異なる個性豊かな五国からなり、地域の人々が主体的に課題解決に取り組み、未来を切り拓いてきた文化を持っている。「震災からの創造的復興」、「人と環境にやさしい循環型農業」、「豊饒な大地や海に育まれた食材」、「挑戦を繰り返してきた地場産業」、「郷土の自然と暮らしの中で受け継がれてきた芸術文化」など、地域を豊かにする取り組みには、世界が持続可能な発展を遂げていくための多くのヒントが秘められているという観点から、「ひょうごフィールドパピリオン」では、地域の「活動の現場そのもの(フィールド)」を地域の人々が主体となって発信し、多くの人を誘い、見て、学び、体験できる催しを展開中だ。
例えば、播磨は歴史散策スポットが豊富なエリアだ。海外観光客にも人気の世界遺産・姫路城をはじめ、忠臣蔵で知られる赤穂城跡など、歴史が息づく城下町には日本らしい情緒が溢れている。また、山と海に囲まれた、豊かな自然に恵まれた但馬エリアでは、トレッキングやスキー、海水浴、キャンプなど、一年を通して様々なアウトドアが楽しめる。
そして、何と言っても、兵庫は「食」の宝庫だ。日本にある200を超える銘柄の中でも、日本三大和牛の一つとしてあまりにも有名な神戸牛は、今や神戸ビーフとして海外の人にも大人気で、神戸ビーフ目当てで日本を訪れる外国人も多いという。
さらに、兵庫県の灘五郷は日本一の酒どころとして有名な場所だ。「こうじ菌を使った伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことが発表されたこともあり、国内外で日本酒への注目が高まることが期待されている。杜氏や蔵人が経験を積み重ね、継承し、連綿と築き上げてきた酒造りは、わが国が世界に誇る大切な食文化。灘五郷はそんな日本酒の歴史と伝統、魅力を見学、体験できる場所なのだ。
例えば、灘五郷にある酒蔵、白鶴酒造の資料館はもフィールドパビリオンの一つに指定されている。酒造りに使用する道具が展示されており、昔ながらの酒造りの様子を学ことができる。さらに白鶴酒造資料館では、マイクロブルワリーで醸造したクラフト酒を通した「HAKUTSURU SAKE CRAFT №1」の酒造りを見学できる施設がある。第1弾が10月に発表された後、着々と準備が進められ、12月には早くも第3弾の「HAKUTSURU SAKE CRAFT No3」が発表される予定だという。
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。杜氏や蔵人が受け継ぎ、守り続けてきた日本の酒造りは、まさにその象徴ともいえるものではないだろうか。(編集担当:石井絢子)