【日経平均】大証のシステムトラブルが水を差し終値45円高どまり

2013年03月04日 19:41

 前週末3月1日のNYダウは景気指標が良くて35ドル高。史上最高値まであと71ドル。日本時間で2日午後にアメリカで強制歳出削減が発動し国防費などがカットされた。問題解決の見通しがつかないままドル高円安が進行し、4日朝方の為替レートはドル円は93円半ば、ユーロ円は122円近辺と、どちらも1日夕方から1円以上の円安進行。すでに1日にシカゴCME先物で記録していた11700円台に乗せるかどうかが焦点の日経平均は89.07円高の11695.45円で始まり、すぐ11700円台に乗せた。

 TOPIXのほうは始値で990を突破し、2010年4月以来の1000の大台乗せが視野に入った、と思う間もなく午前9時50分過ぎに早々とタッチ。日経平均も11750円を超えていた。その背景は9時30分から衆議院議院運営委員会で始まった次期日銀総裁に内定した黒田東彦氏への「所信聴取」で、「2%の物価目標の早期実現が重要な使命」「目標は達成可能だが今の日銀の政策ではまだ不十分」「デフレ脱却に向けてやれることは何でもやる」など市場の受けがいい“黒田節”を次々と披露。「悪い金利上昇にならないためには政府の財政健全化も重要」と、安倍内閣への注文も忘れなかった。5日の副総裁内定者、岩田規久男氏への所信聴取も株価を調子づけそうだ。

 ところが好事魔多し。午前11時過ぎから上げ幅は急速に縮小した。中国政府の不動産規制強化を嫌気した上海市場の大幅下落も一因だったが、それ以上に大証のシステムにトラブルが発生し、日経平均オプション、日経平均先物の取引が停止したのが大きく影響した。復旧は午後2時10分まで長引き、その間、東証、大証の現物株は売買できたが日経平均は11613円まで下落した。再開後は値を戻し、終値は45.91円高の11652.29円で3日続伸となった。TOPIXは+7.92の992.25で昨年来高値を更新したが、1000突破は一炊の夢。こんな日でも売買高は31億株で売買代金は2兆円を突破していた。

 買われた業種は倉庫、陸運、不動産、その他金融、ゴム、サービス、証券と内需系が主体だった。売られた業種は鉱業、鉄鋼、海運、非鉄金属、精密、石油などだった。

 大証のシステムトラブルは株価上昇に水を差したが、日本の株式市場の対外的な信用が失墜しかねず、東証と大証が合併して1月に誕生したJPX<8697>は一時110円安まで売られたが、終値は70円高だった。

 大胆な金融緩和を表明した黒田氏の国会発言を材料に金融緩和期待が盛り上がり、メガバンクのみずほ<8411>は2円高で売買高トップ。三菱UFJ<8306>は8円高、三井住友FG<8316>は65円高。もう一つのメガバンク、りそなHD<8308>も19円高で売買高9位に顔を出した。じもとHD<7161>が250円高で値上がり率8位に入るなど地銀株もおおむね好調。証券株の野村HD<8604>は売買代金トップで4円高、大和証券G<8601>は16円高で、ともに昨年来高値を更新している。

 前週の主役だった不動産株、倉庫株はこの日も軒並み続伸した。野村不動産HD<3231>は188円の大幅高で昨年来高値更新。三井不動産<8801>は58円高で売買代金12位、三菱地所<8802>は87円高で売買代金10位、住友不動産<8830>は130円高で売買代金11位と大いに買いを集めた。住宅関連では大和ハウス<1925>は昨年来高値を更新して54円高、長谷工<1808>は2円高で売買高6位。大京<8840>は19円高で売買高12位だった。澁澤倉庫<9304>は13円高、東陽倉庫<9306>は68円高で値上がり率4位、安田倉庫<9324>はストップ高の150円高で値上がり率9位、イヌイ倉庫<9308>もストップ高で、それら倉庫株4社はともに昨年来高値を更新している。含み資産関連ということで鉄道株も好調で、中期経営計画を発表した28円高の京成<9009>や46円高の小田急<9007>などが買われ、昨年来高値更新銘柄が続出した。

 105円高のソフトバンク<9984>は売買代金ランキング8位に入って日経平均を引っ張り、ソニー<6758>は売買代金2位で48円高と前場から商いを伴って上昇した。コナミ<9766>は77円高。ブリヂストン<5108>、アステラス製薬<4503>、デンソー<6902>、JT<2914>は昨年来高値を更新。5円高の東芝<6502>も昨年来高値を更新して売買高7位、売買代金9位と買われていた。

 この日の値上がり率1位の東京機械製作所<6335>は40円高で売買高も4位。パーク24<4666>は証券会社の投資判断の引き上げもあり11円高。丹青社<9743>は1月期の純利益が99%増と業績好調が伝えられ15円高で昨年来高値更新。シェールガスから軽油を生産する設備をアメリカで販売すると伝えられた日立造船<7004>は18円高で値上がり率16位に入り、太陽光発電関連のサニックス<4651>は56円高で値上がり率17位、売買高8位、売買代金7位だった。

 その一方で、自動車はトヨタ<7203>が振るわず5円安。ホンダ<7267>は一時マイナスになる場面もあり結局10円高と伸び悩んだ。マツダ<7261>は2円高だった。

 上海市場の下落に伴い中国関連銘柄のファナック<6954>は280円安、ダイキン<6367>は45円安、コマツ<6301>は62円安で後場に下げ幅をひろげた。日立建機<6305>も73円安だった。キヤノン<7751>、ニコン<7731>、オリンパス<7733>など精密株もさえず、東京エレクトロン<8035>は85円安。住友金属鉱山<5713>はチリの銅鉱山の開発コストが円安のため10億ドル上振れと日経新聞で報じられ、銅価など資源価格もこのところ低迷しており72円安と売られて値下がり率6位。資源価格の下落で三菱商事<8058>も低調で30円安だった。内需系でも、今年12月期の飲料事業の営業利益が93%増という記事が出てもアサヒGHD<2502>は53円安と株価を下げた。

 この日の主役は内需系の古参分野「百貨店」。不動産関連銘柄人気の流れで土地含み資産銘柄として前週から買われていたが、1月の家計消費など個人消費に明るい指標が出た上に、前週末に発表された2月の売上高が大手5社全て増収だったこともあり、さらに買い進められた。利益の8割を生み出す伊勢丹新宿本店の改装オープンを2日後に控えた三越伊勢丹HD<3099>は28円高、日本橋本店のオフィス複合ビルへの建て替えを予定する高島屋<8233>は14円高、昨秋にうめだ本店が建て替えられて開業し関西では一人勝ち状態の阪急百貨店と阪神百貨店のH2Oリテイリング<8242>は19円高、昨秋に東京店を大幅増床リニューアルした大丸と松坂屋のJフロントリテイリング<3086>は36円高だった。上昇幅が大きかったのが東京の銀座と浅草に店がある松屋<8237>で、後場ストップ高の150円高で値上がり率10位に入った。この5社は全て昨年来高値を更新している。百貨店大手がデフレ下でもあえて大型投資を行ってきた効果は今年、売上、利益の増加となって現れるだろうか。(編集担当:寺尾淳)