世界経済の地雷原、ヨーロッパがついに火を噴いた。イタリアの総選挙は日本時間で26日未明に大勢が判明し、上院はどの政治勢力も過半数を取れず、下院は経済改革継続派の中道左派連合が制したが日本と違い「下院の優越」はなく、誰が首相になるかわからない状態で再選挙も取り沙汰される。政治空白はベルルスコーニ氏率いる中道右派が大勝するよりある意味、憂慮すべき事態で、26、27日のイタリア国債入札が危ぶまれる。
NYダウは216ドルの大幅安。為替レートは一時、ドル円90円台、ユーロ円118円台と1ヵ月以上前の水準に逆戻りした。26日の東京市場開始までに戻したが、それでもドル円は92円台半ば、ユーロ円は120円台半ば。シカゴCMEの日経平均先物は一時500円を超える暴落を記録したが、東京市場の現物は212.86円安の11449.66円で始まり、値が付くにつれてさらに下落し11374円まで下げたものの、その後は徐々に切り上がっていく展開。しかし、後場に入るとユーロが一段安になって日経平均は再び低迷し、終値は263.71円安の11398.81円と11400円を割った。売買高は39億株、売買代金は2兆2120億円と商いはふくらんだ。「2.26」に投資家が「大損トナルノデ皆泣イテオルゾ」になるような暴落こそ避けられたが、市場は毎日のように政治や政治家の口に振り回される。まだもたついているアメリカの「財政の崖・第2ラウンド」のデッドラインは、今週末の3月1日に迫っている。
全面安で業種別騰落率のプラスは水産・農林、不動産、海運、その他金融の4業種のみ。下落率が大きいのは鉄鋼、精密機器、金属製品、ゴム、電気機器などだった。
こんな状況でも上がったのが不動産関連で、三井不動産<8801>は16円高、三菱地所<8802>は50円高、住友不動産<8830>は60円高。東京建物<8804>は目標株価の引き上げもあり13円高だった。
「TPP・農業」関連の丸山製作所<6316>は48円高で値上がり率5位、売買高5位、売買代金9位と大いに買われ、井関農機<6310>は13円高。それに関連して倉庫業では農業倉庫のヤマタネ<9305>が25円高で値上がり率6位、売買高4位に入り、東洋埠頭<9351>が20円高で値上がり率7位。ケイヒン<9312>も買われ横浜冷凍<2874>は7日続伸になっている。海運の川崎汽船<9107>は売買高2位、売買代金3位で14円高と相変わらず強い。この日は久しぶりにノンバンク兄弟のオリコ<8585>が値上がり率8位、売買高9位、売買代金14位、アイフル<8515>が値上がり率18位、売買高12位、売買代金10位に顔を見せていた。
JPX<8697>が28日のMSCIスタンダードインデックス採用を前に210円高と買われ、除外されるスクエニ<9684>は27円安だった。値上がり率11位のワコム<6727>、100円高の日東電工<6988>が証券会社のレーティングや目標株価の引き上げで買われていた。
輸出関連株は軒並み不調。トヨタ<7203>は80円安、ホンダ<7267>は100円安、ソニー<6758>は50円安、リコー<7752>は39円安、ニコン<7731>は74円安、ファナック<6954>は360円安。前日悪かったシャープ<6753>は4円高と反発した。金融関連では65円安の三井住友FG<8316>の下げが目立っていた。ファーストリテイリング<9983>は1040円安と4ケタ安。政府保有株1兆円規模の年度内放出が本決まりになったJT<2914>は本業が悪くないこと、自社株買いを行うことなどから21円安と下げ渋った。
今日の主役は「飼料」関連銘柄。トウモロコシや大豆など輸入農産物に全面的に頼る分野なので、TPPに参加すれば原料安になると期待してか日本配合飼料<2056>が値上がり率1位、売買高8位、協同飼料<2052>が値上がり率4位にランクインし、中部飼料<2053>も5.83%の大幅高だった。しかし、飼料用のトウモロコシや大豆は現在も関税は全く課税されず輸入数量制限もないので、TPPに参加してもしなくても変化はない。強いて言えば輸入米の関税率が引き下げられたり、そのミニマムアクセス(最低輸入量)の制限が撤廃されれば飼料原料に利用しやすくなり、昨年のような干ばつによるトウモロコシの価格高騰時に輸入米を代替原料に使えるということぐらい。これは単なる早とちりなのか。それとも別の思惑で買われたのか。(編集担当:寺尾淳)