【日経平均】94円安を47円高に巻き上げるのも春の風

2013年03月01日 20:32

 NYダウは強制歳出削減問題の進展がなく20ドル安だったが14000ドル台は維持。3月1日朝方の為替レートはドル円が92円台半ば、ユーロ円が121円近辺で前日とあまり変わらない水準だった。

 取引開始前に国内の経済指標が一斉に出て、法人企業統計の設備投資額は-8.7%だったがこれは10~12月期でほとんどの期間は安倍内閣成立前。1月の消費者物価指数(CPI)は全国が-0.2%とまだまだデフレ状態で目標の2%は遠い。しかし1月の雇用統計の完全失業率は0.1ポイント低下して4.2%、有効求人倍率は0.85倍で3ヵ月連続で改善し、リーマンショック前の2008年8月の水準まで戻った。サプライズだったのは総務省の家計調査で、1月の2人以上世帯の消費支出は12月の-0.7%から大幅に改善して+2.4%。市場予測の+0.4%を大きく上回り、政権交代で個人消費にスイッチが入ったとしたら小売・サービス業の業績回復につながる。

 月末日の前日に需給面で特別な要素がいろいろあった影響で日経平均は94.65円安の11464.71円で始まったが、徐々に下げ幅を圧縮。TOPIXは一足先にプラスに転じたがNTねじれ現象が長時間続いた。〃機関車〃のファーストリテイリング<9983>がマイナスでブレーキをかけていたのが原因で、午前11時頃にそれもプラスに転じてようやく日経平均列車は〃発車〃。前引けまでにプラスになり、後場はプラス幅を加速しながら11600円を通過。11648円まで進んだが午後2時台は「利益確定売りの金曜日」に押し戻されて折り返し運転し、終値47.02円高の11606.38円で振れ幅が大きかった今週の取引を終えた。〃機関車〃の終値は50円安だった。中・小型株も好調でTOPIXは+8.67の984.33と大きく伸びている。売買高は29億株、売買代金は1兆8284億円だった。

 上昇業種の上位は不動産、倉庫、証券、パルプ・紙、陸運など。下落したのは石油・石炭、ゴム製品、鉱業、輸送用機器、ガラス・土石、非鉄金属の6業種だった。

 前日に引き続き不動産株が買われて業種別騰落率1位になり、売買代金ランキングをにぎわせた。7位の三井不動産<8801>は76円高、8位の三菱地所<8802>は140円高。10位の東京建物<8804>は37円高で売買高も10位。12位の住友不動産<8830>は185円高と大幅高で続伸した。

 不動産関連として倉庫など含み資産株が買われる流れはこの日、陸運セクターの鉄道や放送局にも飛び火した。鉄道は220円高のJR東日本<9020>をはじめ、JR西日本<9021>、東武<9001>、相鉄HD<9003>、東急<9005>、京成<9009>が昨年来高値を更新。在京民放キー局5社は全てプラスで、日本テレビHD<9404>、テレビ朝日<9409>、フジメディアHD<4676>が昨年来高値を更新した。前日から広告業の電通<4324>、博報堂DY<2433>が高値圏で続伸したが、土地は持っていても収入は広告に頼るテレビ局にもアベノミクスの春はめぐってくるか。

東京電力<9501>が6円高ながら売買高2位、売買代金9位と久々に売買が活発になり、JT<2914>が125円高、キリンHD<2503>が昨年来高値更新で52円高、セブン&アイHD<3382>が55円高と内需系が日経平均を押し上げた一方で、輸出関連銘柄は全般にさえない動き。京セラ<6971>は110円安、東京エレクトロン<8035>は100円安、ファナック<6954>は30円安、ニコン<7731>は16円安、トヨタ<7203)は15円安、コマツ<6301>は15円安。プラスになった銘柄でも、ホンダ<7267>は10円高、キヤノン<7751>は10円高、日産<7201>は7円高と、上げ幅は小さかった。

 3月期決算企業の年度末で、決算対策や資本政策がらみのニュースがいろいろ出てくる季節。ソニー<6758>は前日中に東京・大崎のビル「ソニーシティ」の売却を完了し410億円の営業利益を計上すると発表して52円高。最終損益を黒字化するためにソニーの3月は資産売却バーゲンセールか? 対照的なのが電力事業が好調の東京ガス<9531>で、来期に300億円規模の自社株買い実施の見通しと報じられ18円高で昨年来高値を更新した。野村不動産HD<3231>は正午に野村HD<8604>の子会社が所有する2787万株の売出しを発表し、希薄化にはならないが需給が悪化するためいったん株価は下落したものの、不動産関連銘柄の買い意欲が旺盛なためすぐに回復し132円高。発表のタイミングがいいと、こうなる。

 この日の主役は不動産と並んで勢いよく続伸し業種別騰落率2位の「倉庫」。74円高の澁澤倉庫<9304>とストップ高で150円高の安田倉庫<9324>の両銘柄で値上がり率ランキングのワンツーフィニッシュ。4位に26円高のケイヒン<9312>、9位に36円高の東陽倉庫<9306>、12位に42円高の三井倉庫<9302>が入った。20位で15円高のヤマタネ<9305>も米穀卸と並んで倉庫部門が主力事業で、住友倉庫<9303>も39円高で昨年来高値を更新している。東証2部でもイヌイ倉庫<9308>が100円高と急騰した。土地含み資産がポイントなので、決算が減収でも赤字でもおかまいなし。今後も公示地価、路線価、基準地価、地価LOOKレポート、オフィス空室率、マンション市場動向、東証住宅価格指数など不動産関連指標が出るたびに、倉庫業は意識されそうだ。(編集担当:寺尾淳)