コンビニ出店ラッシュの陰で増える敗者

2013年03月06日 13:25

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セブン-イレブンが四国で初出店。2013年3月1日に香川県で8店舗、徳島県に6店舗を開店させた。

 新政権の経済政策も順調なスタートをきり、長年続くデフレ不況からの脱却に向けて少し希望の光が差し込めてきたという見解も出始めているが、小売業界を取り巻く環境は依然として厳しいことには変わりない。先日は、大丸や松坂屋など展開する流通大手のJ.フロント・リテイリング<3086>が、子会社となる食品スーパーのピーコックストアの株式全部をイオンに譲渡すると発表するなど、業界内では再編が続いている。

 そんな小売業界の中において、勝ち組とされていたコンビニエンス業界だが、スーパーやドラッグストアなどとの価格競争が激化したことで、全国コンビニエンスストア全体での売上高は既存店ベースでは8カ月連続で前年実績を下回っている。しかし、店舗数に関しては、新規出店ラッシュが続いており、今年度のコンビニ大手5社の出店数は合計で4,000店に上るとされている。

 そんな中、コンビニ再大手のセブン-イレブン・ジャパン(セブン&アイ・ホールディングス<3382> は、今月1日に香川県で8店舗、徳島県に6店舗を新規出店した。今回の14店舗の開店を足がかりに、2014年には愛媛県内で、また2016年には高知県でも店舗展開を開始する予定で、今後6年間で四国全県において520まで店舗を増やす計画だという。計画通りに進めば今後の6年間で四国では先行するローソン<2651>やファミリーマート<8028>を出店数で追い抜くことになるため、四国地域の勢力図にも大きな変化をもたらせることになるだろう。

 「集中出店方式」と呼ばれるシステムを採用するセブン-イレブン・ジャパンでは、たとえば弁当を製造する工場から3時間以内に担当エリア内の店舗に配送が可能にならないなどの理由から四国4県での店舗展開をしてこなかった。今回、香川県と徳島県においては、兵庫県と岡山県の製造・物流インフラを活用することで店舗への効率的な配送が可能と判断し、出店に踏み切ったようだ。今年の12月には、両県にオリジナル商品を作る工場が稼働を開始する予定で集中的に出店を進めていく方針だという。

 昨年、国内のコンビニエンスストアの数は5万店を突破し、その後も増え続けている。最近では、既に競合店が多く飽和状態となっている都市圏を避け、出店費用が抑えることができる地方の小さな町の国道沿いなどに大型の駐車場を完備した店舗を出店する傾向にあるようだ。しかし、出店ラッシュでまだまだ勢いがあるように見えるコンビにエンスストア業界だが、その陰では、想定どおりの集客が得られなかったり、ライバルとの競争に敗れ、店を閉めてしまうというケースも増えているという事実もある。

 セブン-イレブンのように新たな消費を掘り起こそうと好調なプライベートブランドなどを武器に出店を強化するという攻めのスタンスをみせるコンビニもあれば、逆にローソンのように地域ごとに店作りを見直したいと新規出店を例年より抑える方向に舵を取り始めたコンビニもあるなど、大手においてもその戦略は様々だ。今や我々の生活にとって欠かせない存在となっているコンビニストアがどんどん増えていくことは、消費者にとっては益々便利になるが、その一方で、コンビニ間の競争が激化し、さらに多くの敗北を生み出してしまうリスクもあるだろう。(編集担当:帯津冨佐雄)