今回のニュースのポイント
三越伊勢丹ホールディングスの2026年3月期連結決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前年比44.1%増の760億9,600万円となりました。売上高は微減となりましたが、伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店での高額品消費が依然として好調で、営業利益は800億2,000万円(同4.9%増)を記録しました。識別顧客数は約835万人へ拡大し、金融や不動産といった周辺領域でも収益拡大が進んでいます。また、総還元性向70%以上、2028年3月期以降はDOE(株主資本配当率)5%以上の水準で実施する積極的な還元方針も鮮明にされました。
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2026年3月期の連結業績は、売上高5,456億2,600万円(前期比1.8%減)、営業利益800億2,000万円(同4.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益760億9,600万円(同44.1%増)となりました。売上高の微減は、前年度の過去最高水準だった免税売上の反動に加え、2025年後半以降の訪日客増勢の鈍化も影響しました。一方で、高粗利のラグジュアリーブランド販売や徹底した経費コントロールが奏功し、営業利益率は14.7%と、百貨店業界でも高水準の収益性を維持しています。
戦略の柱として掲げる「個客業」への転換が着実に進んでいます。同社は2025〜2030年度を「まち化準備フェーズ」と位置付け、その前半である「フェーズⅠ」(2025〜2027年度)において、集客から識別化、利用拡大、生涯顧客化へとつなげる個客業プロセス活動を推進しています。2025年3月に導入した年会費無料の「エムアイカード ベーシック」が会員増に寄与し、識別顧客数は前期末から約74万人増の約835万人に達しました。これにより、年間300万円以上を購入する優良顧客層が厚みを増し、首都圏店舗を中心に個人外商の取扱高が着実に伸長しています。
店舗別では、伊勢丹新宿本店のお得意様向け招待会「丹青会」や三越日本橋本店の「逸品会」において、ラグジュアリーや宝飾時計といった希少性の高いコンテンツの提案が奏功し、好調な推移を見せました。また、オンライン事業も店舗連動企画の強化により、総額売上高が過去最高を更新しています。海外顧客については、一般訪日客の購買が一服したものの、海外外商の取扱高は増加傾向にあり、海外向けアプリの活用等でさらなる囲い込みを図っています。
百貨店顧客データを活用した周辺事業の多角化も進展しています。クレジット・金融・友の会事業では、資産運用や保険を含む総合金融サービス「MITOUS」の展開や、三越日本橋本店内での銀行代理業の開始など、顧客資産のグループ内循環を加速させ、セグメント利益は前期比10.3%増となりました。不動産業においても、新宿エリア保有物件の賃料収入増や建装事業の好調により、29.5%の大幅な営業増益を達成しています。
財務面では、営業活動によるキャッシュ・フローで906億5,500万円の黒字を確保し、自己資本比率は50.8%に改善しました。これら良好なキャッシュ創出力を背景に株主還元も強化し、当期の年間配当を前期54円から70円へ増配したほか、次期は80円を予定しています。また、2028年3月期以降はDOE(株主資本配当率)5%以上の水準で実施することを掲げるなど、資本効率を重視した還元姿勢を鮮明にしています。
現在の百貨店業界は、単なる売上規模を追う時代から、保有する富裕層データの価値を最大化する「顧客資産ビジネス」へと変貌を遂げつつあります。三越伊勢丹は、金融、旅行、不動産を含む独自色の強い経済圏を形成することで、インバウンド需要や為替動向の変化に左右されにくい収益構造の構築を目指しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













