木造マンションが変える住宅市場 脱炭素時代に広がる新たな選択肢

2026年06月13日 18:53

木造マンション

木造マンションは戸建住宅の枠を超え、中高層住宅市場に広がる新たな選択肢となりつつある。脱炭素や環境性能、居住価値を重視する時代を象徴するイメージ。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

三井ホームは、日本初の木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」などの累計受注が100棟を達成したと発表しました。環境負荷の低い木造建築は、従来の戸建住宅の領域を超えて中高層の共同住宅へと広がり、脱炭素や省エネルギー、さらには不動産価値の向上をもたらす新たな選択肢として存在感を高めています。「住まいは鉄筋コンクリートが当たり前」という固定観念を覆し、中高層住宅市場そのものが変化し始めている姿を読み解きます。

本文
 中高層住宅市場で木造という新たな選択肢が存在感を高めています。ツーバイフォー工法のリーディングカンパニーである三井ホームは、独自の先進技術を投入した木造マンションの累計受注棟数が100棟に達したことを明らかにしました。政府による「都市の木造化推進法」などの環境整備が進む一方で、未だ低位に留まっていた中高層建築物の木造化ですが、今回の100棟という節目は、戸建住宅中心であった木材活用が本格的な中高層共同住宅市場へと確実に拡大している潮流を示すものと言えます。

 現代の木造マンションは、自然素材の活用にとどまらず、環境性能そのものが競争力となる段階へ進んでいます。今回達成した100棟による炭素貯蔵量は累計で11,291t-CO2に上り、これは東京ドーム約6.4個分の規模に相当します。構造材に木を用いることで、同規模のRC造(鉄筋コンクリート造)や鉄骨造に比べて建設時のCO2排出量を約40%以上も削減できる高いサステナビリティが強みです。従来、中高層木造の大きな課題とされてきた耐震性、耐火性、遮音性についても、国内最高レベルの壁倍率30倍を誇る高強度耐力壁「MOCX WALL」などの独自技術で克服。RC造と遜色のない遮音性や、木造ならではの優れた断熱・調湿機能による快適性が、脱炭素時代の建築技術として高く評価されています。

 さらに、この技術革新は不動産の価値観をも変え始めています。かつて木造の共同住宅は住宅ポータルサイト上で一律に「アパート」へと分類され、RC造に比べ資産評価で不利な面がありました。これに対し、同社は3階建て以上、劣化対策等級3、耐震等級3または耐火等級4といった厳格な住宅性能評価基準を満たすことで、ポータルサイト上で正式に「木造マンション」と呼称・登録できる仕組みを働きかけ、新ジャンルとして定着させました。第1号物件の「MOCXION INAGI」では、不動産投資市場で用いられる「エンジニアリング・レポート」を取得し、客観的な性能の高さが認められたことでRC造と同様の減価償却期間の選択が可能になるなど、長期運用が可能な不動産としての経済的価値をも向上させています。

 こうした環境価値や快適性の向上は、住まい手側にもダイレクトに響いています。実際の入居者アンケートによると、住み心地に関する入居者の満足度は9割を超えており、「鉄筋コンクリートのマンションと遜色なく快適」との高評価を得ています。また、8割以上の入居者が今後の住まい選びにおいて「脱炭素・省エネ」を意識すると回答しており、木造マンションの広がりが生活者の環境意識を高める契機となっていることもうかがえます。

 その背景にある市場の動きを見ていきます。 住宅市場では、従来の価格や立地といった記号的な条件だけでなく、建物の長寿命化や、環境性能を含めた総合的な資産価値が重視されるようになっています。脱炭素社会の実現に向け、建築分野におけるCO2固定や建設時の環境負荷低減は、今や避けて通れない新たな競争軸です。既存の固定観念が少しずつ変化し、木造マンションという多様な住まいの選択肢が定着しつつある現在の不動産市場は、サステナビリティと居住価値を両立する新たな構造転換期を迎えていると言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)