「au Starlink Direct」を活用した衛星直接通信によるドローン飛行実証の様子。KDDIとKDDIスマートドローンは、携帯電話の通信圏外となる上空でドローンの飛行制御に成功し、災害対応やインフラ点検などへの活用を目指す。(写真提供:KDDI)
今回のニュースのポイント
KDDIとKDDIスマートドローンは、衛星通信「au Starlink Direct」を利用し、携帯電話の通信圏外となる上空でドローンを飛行制御する国内初の実証に成功しました。従来のモバイル通信網ではカバーできなかった山間部や災害時の運用を可能にする技術ですが、本格的な社会実装には平時での需要開拓や航空法・運航管理、運用コストといった「通信以外のハードル」のクリアが不可欠となります。
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KDDIとKDDIスマートドローンは2026年5月、茨城県高萩市において「au Starlink Direct(Starlink Mobileを活用)」とドローンを直接接続した飛行実証を行いました。
近年のドローン利活用では、作業員が目視で操縦する形態から、携帯電話網(モバイル通信)を利用した遠隔での「自律・目視外飛行(BVLOS)」へと移行が進んでいます。しかし、これまでドローンの遠隔運航を支えてきた4G/5Gなどの地上モバイル通信網には構造的な限界が存在しました。地上の基地局アンテナは主に地上の利用者に向けられているため、携帯電話網が利用しにくい上空環境では電波が届きにくく、干渉や通信断が発生しやすい問題があります。特に山間部や離島、広大な森林地帯など元々地上の基地局が十分に整備されていないエリアや、大規模災害で地上の基地局が停電・破損して機能停止したエリアでは、上空が「通信の圏外」となってしまいます。ドローン自体の性能や自動航行技術が進化しても、機体位置やステータス(テレメトリー)の送受信、緊急時の制御信号が途絶えてしまえば飛行させることはできません。この通信インフラの空白地帯こそが、ドローンの産業利用を阻む大きなボトルネックとなっていました。
こうした課題に対し、両社はモバイル通信圏外となる上空環境において、飛行中のドローンと低軌道衛星「au Starlink Direct」をダイレクトに通信させ、機体の飛行制御信号およびテレメトリーデータのリアルタイム送受信に成功しました。本技術の最大の特徴は、地上の基地局を一切経由せず、衛星とドローン搭載端末が直接通信を行う点です。これにより、地上通信に依存しない通信経路を確保でき、通信の冗長性向上につながることを意味します。
本技術の活用には、災害時の状況確認や山間部での遭難者捜索、獣害対策、インフラ点検などが想定されています。もっとも、市場の分析視点からは、「災害対応」や「救助」といった有事のニーズだけでは、民間ビジネスとしての社会実装を継続することは容易ではないとの見方もあります。発生頻度が不確定な災害対応のみを目的として機体や通信システムを維持する場合、平時の稼働率が著しく低下し、投資回収や運用コストの維持が課題となるためです。したがって、本技術が真に社会へ普及するための鍵は、「平時における定常的な産業需要」をいかに創出できるかにかかっています。
例えば、山間部に張り巡らされた送電線や鉄塔、ダム、橋梁といったインフラの定期点検、広大な森林の管理、農林業における獣害監視など、アクセスが難しく日常的に人手がかかっている分野での業務代替が挙げられます。平時に民間事業者や自治体が日常業務としてインフラを運用し、採算性を確保できているからこそ、いざ災害が発生した際に即座に救援・確認用へと転用できる「フェーズフリー」な事業モデルの構築が求められます。
一方で、衛星直接通信の成功によって「通信の壁」は突破口が見えましたが、これだけでドローンが社会に溶け込むわけではありません。実用化・事業化に向けたハードルは、通信以外の領域に数多く残されています。まず挙げられるのが、移動時の通信品質の維持です。ドローンが通常のモバイル通信エリアと衛星通信エリアをまたいで移動する際、通信途絶を起こさずに切り替える「ハンドオーバー技術」の確立が必要です。KDDIは総務省の「令和8年度地域社会DX推進パッケージ事業」を通じて、このシームレスな通信切り替えや、目視外での遠隔運航体制の検証を進める計画です。
さらに制度や運用の観点では、混雑する上空での安全な航行を管理する運航管理システム(UTM)の連携、航空法に基づく飛行許可・安全認証の円滑化、サードパーティ製ドローンへの通信機器の小型化・汎用化、離着陸拠点(ドローンポート)の整備、万が一の事故発生時に備えた責任所在の明確化や保険設計などの課題も指摘されています。導入コストと省力化によるメリットの投資対効果を明確に提示できなければ、民間企業への幅広い普及は進みにくいと言えます。
KDDIグループは、平時・有時を問わず全国どこでも10分以内にドローンが遠隔操縦で駆け付けられる「ドローン社会基盤」の構築を長期ビジョンとして掲げています。今回の実証は、単に「圏外で1機のドローンを飛ばせた」という技術発表にとどまらず、衛星通信、地上モバイル網、運航管理システム、自治体や事業者との現場運用体制をパッケージ化した「社会インフラ」として機能させるための、社会実装に向けた重要な一歩となります。「ドローンという機器を飛ばす」技術実証のフェーズから、「地域社会のインフラとして恒常的に機能させる」社会実装のフェーズへ。制度整備、経済性の立証、そして運用体制の確立を同時並行で進められるかが、今後の普及のスピードを左右することになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













