建設DXは生産性を高められるか 施工自動化が変える建設現場の現在地

2026年07月21日 09:21

画・建設業の人材確保・育成支援のため助成金など、国が予算概要を取りまとめ。

建設現場で稼働する大型クレーン。国土交通白書は、人手不足や高齢化への対応として、AIやロボット、BIM/CIMなどを活用した建設DXの推進が、生産性向上や社会インフラの維持管理に重要だと指摘している。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

建設業では深刻な人手不足や高齢化が進行する一方、デジタル技術やロボットを活用した施工自動化に向けた取り組みが進んでいます。建設分野における新技術の導入は、単なる事務作業のIT化にとどまらず、現場の生産性向上やインフラ維持管理を支える取り組みとして位置づけられています。本記事では、令和8年版国土交通白書の記載をもとに、建設分野におけるデジタル技術活用の現状と実務上の課題を整理します。

■就業者数の減少と労働時間短縮の本質

 我が国の建設業における就業者数は、1990年代の約698万人をピークに減少傾向が続いており、2024年度には約462万人まで低下しています。かつて長期にわたって民間投資・公共投資双方が減少したことや、技能者の処遇改善が十分に進んでこなかったことなどが、担い手不足や高齢化の一因と考えられています。

 また、年間の労働時間を見ると、1980年代の約2,200時間から徐々に減少しており、2024年度には約1,931時間となっています。限られた人材と時間の中で社会資本の整備や維持管理を継続していくためには、従来の労働集約型の業務構造から脱却し、1人あたりが生み出す付加価値を高める生産性向上が不可欠です。

■施工のオートメーション化と現場の効率化

 人手不足への対応として、建設現場ではロボットやドローンなどの新技術を用いた効率化が進められています。国土交通省では、施工のオートメーション化を柱とした「i-Construction 2.0」を推進しており、現場の省人化や安全性の向上を目指しています。

 具体的には、無人化施工技術やロボットを用いた遠隔操作、ドローンによる現場の3次元測量などの活用が進められています。また、将来の宇宙開発を見据えた「宇宙建設革新プロジェクト」のような、極限環境における自動施工技術の研究開発も進められています。これらの技術は、熟練者でなくても一定の作業ができるようにすることや、危険な作業からの解放に寄与するものとして期待されています。

■AI技術を活用した点検・測量・管理の動向

 デジタル技術の活用は、施工段階だけでなく、インフラの点検や測量、施工管理の領域でも広がりを見せています。現場で蓄積されたデータをAI(人工知能)で分析することにより、作業ミスの削減や品質の安定化を図る取り組みが報告されています。

 維持管理の局面においては、AIによる画像認識を活用した道路やトンネルのひび割れ検知、水道設備の監視技術の導入が進められており、インフラの老朽化に伴う管理負担の軽減が図られています。また、気象データや人流データを組み合わせて施工管理や観光プロモーションの最適化に活かすなど、ビッグデータの活用による新たなサービスの創出も推進されています。

■BIM/CIMによる設計と情報共有の高度化

 建設DXの基盤となるのが、計画・設計段階から3次元モデルを導入する「BIM/CIM」の取り組みです。調査、設計、施工、維持管理の各段階において3次元モデルを活用して情報を共有・一元管理することで、設計ミスを事前に防ぎ、現場の進捗管理を効率化する環境が整えられています。

 この3次元データをさらに発展させ、現実の空間をデジタル上に再現する「デジタルツイン」を構築し、まちづくりや都市計画のシミュレーションに活かす「まちづくりDX」も推進されています。官民の多様な主体とプラットフォーム上でデータを共有できる仕組み(国土交通データプラットフォームなど)の構築が、インフラ運営の合理化に寄与しています。

■社会インフラ維持管理における新技術の役割

 建設分野におけるデジタル化の推進は、今後の社会インフラの維持管理や老朽化対策、災害対応において重要な役割を担うことになります。高度経済成長期以降に整備された道路橋やトンネル、上下水道などは、建設後50年以上を経過する施設の割合が今後加速度的に増加する見込みです。地方公共団体を中心に維持管理を担う土木部門の人材不足が顕著となる中、すべてを一律に維持・拡大するのではなく、「予防保全」に基づくメンテナンスや、建設から除却までを通じた「ライフサイクルコスト」の最適化が求められます。

 激甚化する自然災害への対応においても、被災直後に人が立ち入れない地域への先行調査としてドローンを活用するなど、迅速な状況把握と早期復旧に新技術が役立てられています。白書に掲載された事業者アンケートでは、導入・運用コストの高さや技術を使いこなすためのスキル不足が現場における新技術導入の課題として挙げられており、今後はコストの低減や人材投資の支援を通じて、いかに実効性のある社会実装を官民で進められるかが焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)